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サロン21

日立と東芝の企業文化について

企業文化とは

文化を語るには、歴史とか慣行から生まれたものを言葉で表現しにくいので、その集団の中で経験したことや、世間で認識されている言葉で表現するのが適当と思う。私の場合は、住友商事に入社して身についた『住友の営業の要旨』(住友の事業全般が対象)がある。下線部分は一般的に知られている。

第1条
我が住友の営業は信用を重んじ確実を旨とし 以て其の鞏固隆盛を期すべし。
第2条
我が住友の営業は時勢の変遷理財の得失を計り 弛張興廃することあるべしと雖も 苟も浮利に趨り軽進すべからず。

最近の住友商事では経営理念が定められている。

  • (企業使命)健全な事業活動を通じて豊かさと夢を実現する。
  • (経営姿勢)人間尊重を基本とし、信用を重んじ確実を旨とする。
  • (企業文化)活力に溢れ、革新を生み出す企業風土を醸成する。

住友商事元社長の秋山富一氏(現、名誉顧問)の感想では、住友商事の社員は「書生っぽい」と。
このような一言で表現した日立の文化は「野武士」、東芝の文化は「公家」であろうか。同業者を比較してみると企業文化の違いが分かる。

日立と東芝の文化比較から得るもの

この2社は業種も規模も似ており、違いを探していたが、昨年、私が属している一般社団法人ディレクトフォースの企業ガバナンス部会の小研究会で今年6月までの半年をかけて、DF研究報告書「企業文化の研究―東芝と日立を比較して」を作成した。業績そのものは結論が出ていたが、日立は創業の精神の段階から明確で分かりやすいのに対し、東芝は明解さに欠ける。これは正に文化の違いである。両社は依然として大企業であるが、必ずしも将来への展望は描けない。東芝の経団連会長会社への道は絶たれたが、今年6月から日立は初めて経団連会長会社になり、経団連に新しい兆しが表れている。日本の財界の問題へと発展するだろう。

企業文化の研究はなぜ重要か

私は住友という400年を超える長寿企業の文化の中で育ち、文化の異なる商社間の盛衰を観察してきた。現在、コーポレートガバナンスやコンプライアンスの問題が話題の中心になっているが、これらは英米文化の影響を受けており、日本文化と肌合いの違いがある。
監査役制度も見直す必要があるが、世の実態と符合しないまま150年以上過ごしてきたので、厄介な問題である。

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