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何でも読もう会

『戦争の悲しみ』バオ・ニン

首藤 静夫

本の紹介

バオ・ニン著、井川一久訳

  • 1990年発表、ヴェトナム作家協会賞の選考に。翌年受賞。
  • 作者バオ・ニンは北ヴェトナム人民軍兵士としてヴェトナム戦争を戦い、激戦と死を体験。その体験をベースに、戦争がもたらす人間の悲しみを謳いあげた。
  • 主人公キエンとその同級生フォンの恋愛を縦軸にし、戦争を横軸にして織りなされたドラマ。北ベトナム側から描かれた小説である点、日本人には大変貴重である。しかも、個人の運命・個人の感情を率直に描いており、体制・反体制の枠を超えた小説である。
  • 訳者は戦争当時のヴェトナムに駐在したジャーナリスト。
鑑賞
  1. ・「北」の正規兵が書いた小説
    ドイモイ政策の中で書かれたとはいえ、共産体制国家で、しかもその正規兵として戦った人が堂々と書いていることの衝撃。
  2. ・フラッシュバック
    主人公キエンに、戦後いくどとなく現れるフラッシュバックの時間軸が順番でない。ドイモイ政策の中で書かれたとはいえ、共産体制国家で、しかもその正規兵として戦った人が堂々と書いていることの衝撃。
    読者には大変だが、作者の意図はあるのだろう。そこまでは読み込めず。
  3. ・過激な戦闘シーンと残虐シーン
    沢山ありすぎて少々食傷気味
  4. ・戦争小説と恋愛小説のバランス
    成功しているかで意見分かれた。主人公は理想に燃えて入隊したのか? 純情な彼が精悍な斥候リーダーになる課程が不明瞭など
  5. ・恋愛小説として見ると
    後半部分の描写は感動的。
    ヒロイン、フォンの生活退廃にいたる課程がもう少し欲しかった。
    17才同士の恋、性というところはよく分った。賛成。
  6. ・書くために生かされている、が良く分った。
  7. ・日本語翻訳は名訳  全員賛成
  8. ・平和な日本にいて戦争を良く知らなかった自分の無知が恥ずかしい。  以上

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