作品の閲覧

何でも読もう会

『にごりえ』樋口一葉

全員で討議

本の紹介

作者の代表作の一つ。一葉は明治5年生で漱石、露伴より5歳下。24歳半の短い生涯を生活苦や病魔との闘いに明け暮れた。本格的作家活動はわずか一年半で、この間にいくつかの名作や日記をものした。
彼女の作品は、その貧困や周りの生活環境がベースになっており、大変リアルな描写である。

『にごりえ』は二流色街の遊女「お力」が主人公。「お力」に熱を上げ過ぎて身代をつぶし、貧民窟に住む所帯持ちの「源七」。彼はお力を諦めきれない。お力は商売と割り切ろうとするものの男のあわれさが気がかり。そこへ上流階級の好男子「結城」がお力の客として現れ、お互いに気持ちが接近する。二人の男のはざまで気持が揺れるお力の遊女心理。このあたりがメインストーリである。

読後感想など

①文章の良さ

擬古文の読みづらさはあるが、慣れてくるとそのリズムの良さ、簡潔できれいな文章に引き込まれたとする意見多し。漱石的雰囲気もあるとの意見も。

②リアルな良さ

「源七」の子供がお力に菓子を買って貰ったと聞いてカーッとなる源七の女房
―このくだりはリアルだった。
客相手の途中にふと気分が堪らなくなり、思わず外に飛びだすお力の心情
―大変に文学的香りがする
など、各自感想を述べる。

③「結城」という上流階級の客の登場

一葉の描く人物像は性格がカッチリして分かり易いが、「結城」の登場と役割が今一つとの意見多し。
明と暗の対比で、明の代表で出したという意見、明暗の二元世界で捉えるのはいかがか、明治の元勲でも花柳界出身妻はいるのだからという意見等。

④終わり方が不自然?

あわてて終わらせた感があり不自然との意見
これ以上引き伸ばしようがないのではとの意見
源七は妻子を愛していたが、無理心中するためあえて離別した。お力もうすうすは殺されると感じていたとする意見など。

多くの意見、疑問が出されて賑やかだった。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧