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エッセイ・コラム

コロナ禍と国債

児玉 寛嗣

 コロナ禍で欧米諸国なども失業対策や企業救済のため政府が金を出して支援しようとしている。それは国債で賄われている。どの国も過去最高の国債発行高を記録しているようだ。皮肉にも大量の国債発行で借金大国と揶揄されてきた日本の後を追っている。果たして、国債が増えることは悪なのか。

 日本の国債は約半分を市中銀行、生保、年金基金、海外投資家などが持ち、残りは日銀の保有だ。日本の財政は危機的なので、財政支出を拡大してはならないというが本当にそうなのか。
 自国通貨を発行する政府が自国通貨建ての国債が返済できなくなることは理論的にはあり得ない。例えば、銀行や生保が現金がいるので国債を売りたいと言えば、政府が国債を発行して日銀がそれを買い取り、政府が受け取った金を銀行なりに渡せばよい。
 国債はすべて円建てなので、海外投資家が持っているものも同様の手が打てる。国債の発行額を増やしていくとインフレになるというが、第一次大戦直後のドイツを除き、先進国になかでインフレが制御不能になった例はない。国債発行残高が年々増えているが、日本はインフレどころかデフレである。インフレにならない限りは国債が発行できるとすれば、発行高が足りないくらいだ。
 また、発行残高が増大すると金利が上昇すると懸念されていたが、長期金利はむしろ下落傾向にある。

 コロナ感染者数を抑えて医療崩壊を防ぐこととコロナの影響で不振にあえぐ観光業や飲食業などに従事する人たちを救済することとが二律背反となって政府も苦慮している。
 観光業や飲食業の救済策として行われているGo toトラベルやGo toイートが直接、感染拡大の原因になっているか否かは議論の別れるところだが、世の中のマインドを変える意味でも一旦、休止してホテルや飲食店などの経営者、従業員に納得がいくだけの額の補償金を給付するべきではないか。元資は国債の増額によらざるを得ないが前述のようにそれによる懸念はないと考える。

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