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エッセイ・コラム

デッキチェアトラベラー

大森 海太

 コロナ騒ぎで外に出られないので、今まで行った海外旅行や歴史の本で読んだことなどをつなぎ合わせて、やむなく開高健曰くところの「デッキチェアトラベラー」で世界を駆けめぐっております。

 先ずは文明発祥の地、メソポタミアから出発して、肥沃な三日月地帯、シリア、パレスチナからエジプトに入ります。昔、ピラミッド見物に出かけたとき、乗せられたラクダが突然走り出したのでしがみついていたら、土産物屋の前でピタリと止まりました。そのとき買わされたパピルスの絵は、今でもウチの玄関に掛けてあります。
 エジプトから西に進むと、昔のカルタゴ(現チュニス)から、ジャン・ギャバンの『望郷』の舞台アルジェ、ハンフリー・ボガードの『カサブランカ』などを経てジブラルタル海峡を渡りイベリア半島に入ります。
 スペインではマドリードとトレドしか行ったことがありませんが、東のカタルーニャ、北のバスク、南はアンダルシアのイスラムの痕跡など、多文化が混在する国です。

 そこから地中海を東に進むと、死ぬまでに一度は行ってみたいのがシチリアです。最初にフェニキア人が入植しましたが、ポエニ戦その結果古代ローマの支配するところとなり、その後イスラム勢力が根を張り、さらに12世紀ノルマン人が王国を築き、跡を継いだフリードリヒ2世(フェデリコ)、アンジュー伯シャルルに続いて、13世紀後半からアラゴン連合王国(後にスペイン)の所領となって18世紀に至る、歴史好きにとってこんな面白い所は滅多にありません。

 さてヨーロッパ本土に渡れば、行ってみたいところはキリがありませんが、敢えてひとつと言えば、カール大帝のフランク王国が3分割されたなかの真ん中、昔のブルゴーニュ公国やハプスブルク家の所領だった一帯。歴史的遺産が多いし高級ワインの産地も近いし、まあこんなところで2~3ケ月ゆっくり遊べたらなあ・・・デッキチェアに寝そべってみる夢は金もかからないし、まだまだ先は長いですよ。

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