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エッセイ・コラム

山手線と京浜東北線の交差

松浦 俊博

 JR山手線の巣鴨駅から京浜東北線の鶴見駅までの路線を、30年以上通勤に利用してきた。北に位置する田端駅から南の品川駅までの区間は山手線の東側半分にあたり、この区間では京浜東北線が並走する。品川駅とその隣の田町駅の間に「高輪ゲートウェイ」という新駅ができて、本年春にオープンすることになっている。昨年11月16日に線路の切替工事があり、電車が新駅のホーム横を通るようになった。この変化を見ていると線路の交差に興味がわいてくる。

 山手線の路線は卵を上下逆さにしたような形で、内回りと外回りの二重円から成る。これに対して京浜東北線は二本の平行線である。これらの二重円と平行線の四本の線路配置はよく考えられている。次の工夫が見て取れる。(1)各駅に二つのホームを設置する。各ホームに山手線と京浜東北線をそれぞれ一本ずつ割り当て、それらが同じ方向に走るように配置する。(2)山手線は東京の町中を走っているので、その線路は動かさない。(3)線路の交差箇所を最低限にとどめる。

 こうして四本の線路の配置が決まる。山手線二本を動かさず中央にして、その両側に京浜東北線を一本ずつ並べる。京浜東北線の南向き路線は山手線外回りと向きは同じで東側に、京浜東北線の北向き路線は山手線内回りの西側に配置する。ここまで決まると、交差方法は京浜東北線の北向き路線が二か所で山手線二本を越えるしかない。転轍機で切り替えるか立体交差かの選択だが、当然ながら立体交差になる。一か所は昔から使われており、田端と駒込の間で京浜東北線が山手線の下をくぐっていく。もう一か所が新駅と田町の間に高架橋として出現した。京浜東北線はここを昇って降りる。これだと、新駅では山手線から同じホームで京浜東北線に乗り換えられないことになる。乗り継ぎの点では品川と新駅の間に高架橋があるほうが便利だが、新駅を品川に近づけたいという力が働いたのだろう。

 新駅西側には国道15号脇までの広大なスペースができた。ここに新しい街が作られるそうだ。総事業費およそ五千億円で新しい駅のほか、オフィスや商業施設や住宅などが入る合わせて6棟の超高層ビル、それに広場などを整備する計画をめぐって、金儲けばかり考える救われない輩が蠢いているのだろう。ともかく美しく楽しい街のお目見えを期待している。

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