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エッセイ・コラム

渋谷彷徨 ~隠居のつぶやき

西川 武彦

 台所の給湯器が超高齢化して使えなくなったというので、ノートパソコン部品の補給も兼ねて、渋谷駅東口に近いビッグカメラへ久し振りに出かけた。
 持ち帰りに苦労しないようマイカーを駆って行くと、ビッグカメラと同じ道路沿いにあり便利だった区営駐車場はなくなっているではないか。半年もご無沙汰すれば、渋谷の街は変貌するから忙しい。やむなくUターンして坂の上にあるNHK放送センターに近い区営駐車場へ。第二次世界大戦の前、同センターの辺りに母方祖父の家があり、坂下の渋谷を望んだ記憶が懐かしく蘇る。
 渋谷区営駐車場は地下三階まであり、なんとかB3に空きを見つけて入れたのはよいが、地上と結ぶエレベーターが見つからない。傾斜が強いコンクリートの階段は、一階毎に30段ほどあるから、後期高齢者の二人には厳しい。踊り場で一休みして、青息吐息……。なんとかよじ登って地上に出ると、坂を下って目的の店に向かった。

 平日の午後というのに、渋谷にはとにかく若者が多い。東洋系外国人もかなり混じっているようだが、容姿、服装では見分けがつかない感じだ。先日、これも久し振りにぶらついた銀座では、広い歩行者天国は、会話から察して中国系と思われる男女が溢れていた。それに比べ、毎週歌の練習で通う新大久保界隈は、韓国系で最近ではそれに印パなどアジア系が加わっている。日本人より彼らの方が多い。筆者が住むシモキタは、どちらかといえばコーケシア系の男女がたむろしているようだ。同じ都内でも棲み分けがあるみたいだ。体力的に厳しくなった海外旅行を国内で味わっている気分がしないでもない。
 下り坂の途中で、新装なった渋谷パルコに立ち寄って見物したが、若者向けの店ばかりだ。お呼びでない感じで、早々に撤退する。

 ビッグカメラは、生活家電は本店に、パソコン・事務機器は別館にあるから、連れ合いは前者、筆者は後者と別れ、用が終わったら別館で待ち合せることに。いつものことだが、その約束を忘れて、筆者が興味本位にあちこちと動いて所在が不明になったから、それでひと悶着。なんとか目的を達して、買い求めた給湯器やらプリンターのインクなどをぶら下げて駐車場に戻る。急坂を昇るのに息が切れる。さして重くもない手荷物なのに早や疲労困憊である。
 たまにレコードやCDなどを求めに入るタワーレコード辺りを通り過ぎると、なぜか愛唱曲であるフランク・シナトラの〝MY WAY″のメロデイが頭を巡った。
 And now, the end is near, And so I face the final curtain…

 年末に少し寂しい話になりましたが、今少し頑張ります。来年も書き続けますので、ご愛読頂ければ幸いです。(完)

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