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エッセイ・コラム

さようなら、巨大旅客機

松浦 俊博

 綾瀬はるかのCMで知れ渡ったように、本年5月にANAのハワイ便にエアバス旅客機A380が就航した。何のために今頃こんな巨大機を導入したのかと思う人が多かっただろう。

 A380は2007年、華々しく運航を開始した。総2階建て4発エンジンの世界最大の旅客機で、最大離陸重量560トン、翼幅80mもある。ボーイングB747の435トン、69mが見劣りするサイズである。当時のエアバスは「巨大ハブ空港」に多くの乗客を運び、そこから小型機でそれぞれの目的地に運ぶ方式が主流になると考えた。ところが、航空会社は小型で燃費の優れた機体を使って多くの直行便を運行するようになった。結局、エアバスは2021年までにA380の生産を終了すると発表した。A380の採算ラインは420機程度で受注数は321機とのことなので不採算なプロジェクトだ。なぜANAがこんな時代遅れな機種導入を決行したのかわからない。ホノルル線の特殊性か、エアバスとの関係などで別の裏事情があったのか。

 10年ほど前、カリフォルニアに居た息子に会いに行った時にシンガポール航空のA380に乗った。大きいとは思ったが感動した記憶はない。空港では全く厄介者である。空港設備が巨大機に合わないし、離着陸に気流を大きく乱すので他機との間隔を広げる必要がある。

 最近の旅客機は、4発エンジンの巨大機よりは双発エンジンの中小型機が主流になった。大出力エンジンが開発されて、空力性能も飛躍的に向上した結果、中小型機の航続距離が著しく延びたことが背景にある。日本政府専用機も本年4月に大型のB747機から中型B777機に変更された。B747機は1968年運航開始し、2014年には通算1500機の製造記録を達成した英雄だがA380を追うように生産終了するようだ。 ただ、B747の貨物機は現在でも世界の航空貨物のおよそ半分を輸送している。機首部分を開いて112トン程度の大きい荷物を積み込める。こういう設計配慮をしていないA380の貨物機は売れなかった。

 これからの旅客機は中小型機が主流になり、電動飛行機に移行していくのだろう。

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