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エッセイ・コラム

「免疫力アップ」を考える

藤原 道夫

 免疫力とは、外から体内に入って病気を惹き起こす微生物(細菌、ウイルスなど)に対抗して体を守る働き。生きていくうえに大切だ。最近「免疫力をアップする」という言葉を新聞の広告などで見かける。太極拳の指導者や魚屋さんがそのように言うのを聞いたこともある。この言葉をどのように受け止めたらよいだろうか。ここでは免疫力を調べる方法までは言及できない。試みとして考え方を述べる。
 ヒトの体は臓器とその働きによって、消化器系、循環器系、神経系などに分けられており、医療にもそれぞれに対応した専門分野がある。それらの系はお互いに何らかの関係を保ち、体全体としてうまく働いている。免疫力を担う免疫系は、リンパ球が中心となって働く。それ以外にも免疫力を助ける細胞も知られている。粘膜も免疫力の一翼を担っているといえよう。さらに免疫系は自律神経系や内分泌(ホルモン)系とも関連しながら働いている複雑な仕組みだ。
 十九世紀フランスの生理学者C.ベルナールは、体の働きを全体として捉えようとして内部環境の恒常性(ホメオスタシス)を提唱した。この概念を取り入れて考えると、免疫力アップの意味あいが深まってくる。
 体の働きのホメオスタシスを保つために、さまざまな要因が関与している。免疫力アップに関連して主な要因を挙げると、先ずよい睡眠。これは体の働きを維持する上で基本となることは言うまでもない。その他の要因として①食物。タンパク質、脂質、糖質、ビタミン類、ミネラル、食物繊維などの必要量をバランスよく摂ること。これらはホメオスタシスの維持に係わり、体全体の活動を支える。免疫力を選択的にアップする食物や飲料はまずないといえよう。②適切な運動。筋肉と骨に刺激を与えることにより脳の活動が活発になり、またホルモンの分泌も促され、結果として免疫力アップにつながる。体によいと思いながら続ける運動はよい効果をもたらすだろう。③心地よい行動。好きなスポーツをする、落語をきく、入浴するなどでリラックスした気分になると、ドーパミンやオキシトシンなど快感をもたらす物質の放出が適度に促される。これが免疫力アップにつながると考えられる。
 免疫力アップに特別なことは要らない。体のホメオスタシスをより高いレベルに維持しようと心掛け、実施することが肝要である。

補足:①がんや重症の疾患に罹っている人について、ここでは対象としていない。
②注目すべきことはストレスが免疫力を低下させること。ストレスのかかる現代に生きる人々は問題を抱えている。

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