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エッセイ・コラム

飛行機の重さと速さ

松浦 俊博

 最近はB787などの新しい飛行機にも比較的低料金で搭乗できる。席の前のディスプレーには色々な飛行情報が表示され、コクピットにいるような臨場感がある。興味をそそられたので、B787の重さや飛行高度と速さについて調べた。

 最大重量は離陸時247トンで着陸時193トンである。離陸直後にトラブルが生じ緊急着陸する場合、重いと減速できず、着陸装置の損傷やオーバーランを生じるので燃料の一部を海に捨てる。重量の内訳は、機体重量が129トン、このうちエンジンは2個で11トン。ペイロードと呼ばれる乗客と荷物が約30トンで機体重量の1/4程度。燃料は日本からヨーロッパに行く場合には予備を含めて約75トンで、全重量の3割程度も占める。遠距離を無給油で飛ぶ国際便の宿命である。

 定期便は燃料を節約し、さらに高速度を保つように飛行計画される。飛行高度は、天気の影響を受けにくい成層圏の下部としているが、この高度は燃料の節約にも適している。高度10kmでは気温は-50度、空気密度は地上の1/3で、高度12kmでは気温は-57度、空気密度は地上の1/4である。エンジン効率は大気温度と燃焼ガス温度の差が大きい方が高いので、気温の低い高度でエンジン効率は高まる。推力は約11トンで飛行機重量の1/20で済む。これが飛行機の驚くべき特性である。垂直に打ち上げるロケットにくらべて1/20の力で飛行機を持ち上げることになる。 飛行中の重量は、燃料が消費された分だけ軽くなるので必要な揚力も小さくなる。これに合わせて、翼を小さくできればいいかもしれないが構造的にはそのようになっていない。そこで飛行高度を10kmから空気密度の小さい12km程度に段階的に上昇させる。上昇させないと飛行機の速度を下げなくてはならず、これに伴いエンジンの効率も下がる。

 また、定期便にとって空港での駐機時間は大きなロスになるので、目的地まで日帰りができれば2時間ほど駐機してピストン運用する。例えばANAの羽田-バンクーバでは、羽田で3時間20分、バンクーバで1時間30分の駐機時間で折り返している。そのため多少燃費が悪くなってもこの時間に間に合うようにスピードを上げる。日帰りできないヨーロッパ便などの場合は、例えば2便投入すれば5時間ほどの駐機時間でピストン運用できるはずだが、実際には日本かヨーロッパの空港で20時間ほど駐機するようだ。 風がなければ、音速の9割程度の時速900~950kmで飛べるが、偏西風など季節により変わるジェット気流を避けきれず、時速100kmを越える向かい風を受けて長時間飛ぶことになる。それでも大幅に遅れないのは、世界空域予報中枢の情報の正確さと綿密な飛行計画のおかげだ。

 燃費が半分になればもっと自由に旅ができる。B787の燃費はその40年前に開発されたB747の半分くらいになっている。旅客数を考慮しても3割ほど改良している。これからの進歩を見込むとさらに半分になるのも夢ではないだろう。どんな飛行機になるのだろう。主翼は面積がかなり小さくなり鳥の羽毛のようなものに覆われる。また、離着陸時には主翼先端部分が外側に伸びる。実物を見届けることはできないが。

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