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エッセイ・コラム

隠居のつぶやき ~多国籍化に思う

西川 武彦

 大阪なおみが、テニスの全米オープンで、セリナ・ウイリアムをストレートで破って優勝した。快挙である。20歳のあどけない顔もよいが、可愛い声でのやや頼りない日本語のスピーチにも好感が持てる。
 その彼女は、帰国後の初戦「パンパシフィック・テニストーナメント」では、決勝まで進んだものの、重なる疲労もあり、決勝では、往年の覇者K・プリスコバに敗れた。
 同トーナメントは、東レが主催するオープン・トーナメントで、35年前から、有明テニスの森公園・コロシアムで毎年開催されており、通算すれば半世紀近いテニス歴がある筆者は、転勤・出張等で不在でないかぎり、毎回観戦している。
 この大会は、全米オープン終了後のタイミングで、9月に開かれるから、ランキング上位の著名選手が観られるのだ。往年のナブラチローバ、グラフ、伊達公子、杉山愛たちの試合も楽しんだ。若くて容姿優れる彼女たちのピチピチした動きを、目尻を下げながら眺めたものだ。

 ところが、今年から、会場は新設のアリーナ立川立飛・ドームにかわった。
 写真で観れば素晴らしい施設のようで、我が家からは、電車を乗り継いで、有明と同じ程度の時間でいけるようだ。……とはいえ、こういう変更は、平均寿命を越えた高齢者にはいささか厳しい。新しがり屋の筆者にしてしかり。
 で、これが節目かとテレビ観戦に替えたが、結局、今回報道されたのは、大阪なおみとK.プリスコバの決勝戦だけ…。彼女の登場で、当初集客に難儀していたという立川移転は、大入りの大成功だったというから悔しい。

 大坂なおみはハーフであるが、訪日外客数が欧州各国並みに近づいてきた近年、都内の盛り場は、少し大げさに言えば、どこの国にいるのか気になるほど多国籍化している。
 多くの日本人が外国人との間で子供を産み、孫につながる。容姿も混ざり合って何人か判別できなくなる。それに加えて、平均年齢75歳の「企業OBペンクラブ」の会員が育った頃と違い、高度成長を経て生活がすっかり洋風化したジャパンでは、日本人の容姿そのものも変わっている。長身・足長・顔つき、etc. 昔風にいえばバタ臭いのだが、風土が変わったとでもいえようか。

 先週、T新聞の日曜版が、「米国白人社会~減少と苦悩」と題して、見開きの特集を組んでいた。見出しに並ぶ写真では、トランプさんが、右手をまるめていきり立っている。
 曰く、中南米を中心に、沿岸部への移民が増え、それが内陸部にも押し寄せているという。いわゆる白人の人口は2040年代には半数割れになるとか…。もとは移民社会だったのに、それが揺れているのだ。
 和洋折衷が心地よく熟成した安全な社会であるジャパンはこれからどうなることやら、とご隠居はつぶやいている。

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