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エッセイ・コラム

ジャカランダの花あれこれ

大平 忠

「800字文学館」に藤原さんが「熱海のジャカランダ」を投稿された6月中旬ごろ、宮崎出身の友人から、やはりジャカランダの花についてのメールがあった。宮崎の日南市にジャカランダの花が咲いていると聞いて行ってみたが、半分散っていて残念だったという内容だった。私は、日本にも熱海と日南に「ジャカランダ」の木があり、花の美しさを観光の目玉にしようとしていることを知った。

 私は、現役時代に南アフリカのヨハネスブルグへ出張したことがあった。その時、ちょうど薄紫色の花が満開の並木路に出会った。木も大きく10米以上あったと思う。一瞬この世のものとは思えない感じがした。この花の紫の色はやや薄く青みがかって、花は嫋やかで高貴な風情をたたえていた。満開の桜はあくまでも明るいが、満開のこの花は何かしら憂いを秘めていた。これらの木が満開の花をまとって何十本と並ぶ様は、まさしく夢の世界であった。現地の人に聞くと、「ジャカランダ」という名前の木で南アフリカにはたくさんあるという。「ジャカランダ」という名前の響きが、また魅力的に聞こえた。

 それ以来、私は「ジャカランダ」の木の原産地は南アフリカとばかり思い込んでいた。今度藤原さんのエッセイで、アルゼンチン原産そしてノーゼンカズラ科に属すると知って驚いたのである。

 私はブラジルに行った際には、「ジャカランダ」の木の名前も知らなかった時であり、開花期だったが、花を見た記憶はない。しかし、南米原産と知って、ブラジルではどうなのか、ブラジル駐在経験のある先輩に電話をした際に聞いてみた。すると、ブラジルではこの木は大きく(15米に達する)ノーゼンカズラ科だけあって大変固く丈夫なので、家具とか杖などの材料として使われるとのことであった。

 これを機会にインターネットで調べてみた。日本では1964年にボリビアから沖縄に輸入したのが最初らしい。この時、満開の花が紫の雲に見えることから「紫雲木」という名前が生まれ、以後和名になったという。
 さらに、旅行会社の南アフリカへのツアーの募集の謳い文句に「ジャカランダの花を見よう」という企画も見つけた。香港ないしはシンガポールで乗り換え20時間以上かけても、見に行く人がいるのであろう。確かに、私も10年若かったら、応募するかもしれない。あの高貴な薄青紫の夢の世界にもう一度行きたいと思う。しかし、もう無理である。同じ九州の日南に、来年の開花期に行けたらと思っている。

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