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エッセイ・コラム

ダボス会議と世界情勢

森田 晃司

 世界経済フォーラムは1971年にスイスの経済学者が提唱して設立されました。世界のリーダーを集めてさまざまな課題に向き合い、改善を目指すのが目的です。毎年スイスのダボスに世界の賢人、リーダー2500人を集めて年次総会を開くので、これをダボス会議と通称、また、賢人会議とも呼ばれています。公式の会議よりも、要人が秘密裏に接触して行われる密談の方が重要との評価もあります。
 過去には食糧問題、環境問題などで提起を行い世界の潮流に強い影響を与えてきました。
 このダボス会議は2017年には習近平総書記を招き、何と「自由貿易を守る」と云わせました。トランプ政権の“保護主義”、“アメリカ・ファースト”に対する牽制でした。
 1月23~26日に開催された今年のダボス会議は、そのトランプ大統領を招きましたが、同大統領は会議のスピーチで「米国はもはや不公正な経済貿易慣行を見過ごさない」、自由貿易は「公正で相互的でなければならない」と従来からの主張を改めて強調しました。
 グローバリズム、自由貿易の推進役だったダボス会議が、あえてトランプ大統領に自説を展開する機会を与えたことは深い意味がありそうで、世界の潮目の変化を告げるものかもしれません。世界の要人、国際金融資本とトランプ大統領の間に、政治、経済面での何らかの取引が行われた可能性があります。
 この会議後、北朝鮮は俄かに融和姿勢を取り出し、急遽、オリンピックへ参加し、米朝直接対話を提唱し、中国を慌てて訪問し、南北対話を唐突に実施してきました。従来の対米挑発路線では、米国の軍事攻撃を避けられないと悟ったかのごとき、周章狼狽ぶりです。
 また、トランプ政権は、ダボス会議後、中国に対する、知的財産権の侵害などの理由で大規模な経済制裁も矢継ぎ早に発表しています。更に、安全保障上の理由から中国国営企業の幾つかとの取引を制限する案も発表しています。
 ニクソン訪中後、ここまでの中国膨張を支えてきたのは、米国を中心とする国際金融資本でしたが、トランプ政権は中国封じこみへと明らかな路線転換を測っています。
 日本の親中派やマスコミは依然として、AIIBだの、一帯一路だのへの参加をけしかけています。世界の潮流を読み間違うことのないように、注視して行きたいものです。

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