作品の閲覧

エッセイ・コラム

恩師に学ぶ(②正坐二時間)

安藤 英千代

 当時コンクリート校舎が新築、三年生が初めて使う事になりました。
 屋上から仰ぐ霊峰高千穂の峰は神々しいほどに見事で、「危険なので勝手な屋上使用は禁止!』だったにも関わらず、私達は約十名の仲間は、屋上の絶景の中で弁当を食べるのが最高の楽しみとなっていました。数日後、三年生三百五十名全員が屋上に集合させられ、「屋上で弁当を食べていた者は前に出てこい!」と鬼の財部先生が竹刀を手に仁王立ちしているのを見たとき、あの往復ビンタを思い出して身がすくみました。中々出てこないのを見かねて、「十数名がいたのは分かっている。これから分かったものは徹底的にぶん殴るから覚悟して出てこい!」と、益々エスカレートし収まる気配はありません。
 「こりゃダメだ。誰か殴られないと収まらないな・・」と覚悟を決め、「君たちは出るな」と目配せし私が出ていくと、後から仲間がゾロゾロと出てきます。「アチャー!これは大変なことになった!」と覚悟を決めると、先生は「そんなに屋上が好きなら、コンクリートの上に正座しろ!」と、十数名全員が約二時間正座させられました。
 二時間後やっと解放されましたが、膝から下の感覚が全くなくなり、立ち上がれるようになるまで20~30分はかかりました。これ以降、屋上に上がる者は全くいなくなりました。

 「二時間正座だけで済んで良かった」と胸をなでおろしましたが、これには後日談がありました。当時成績抜群でスポーツ万能のスーパースターだった功君も同罪で二時間正座したのですが、その後、職員室に行き、「先生は徹底的にぶん殴ると言った。覚悟したので殴って下さい!」と迫ったそうです。さすがの鬼の財部先生も、「あれには往生したよ!」と、20~30年経っても述懐されていました。(この功君は、都城高専を卒業後、東京のビル設備設計会社に勤め、弱冠三十歳前後で京王プラザホテル厨房設計責任者となる等大活躍しました。)

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧