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エッセイ・コラム

衆院選雑感Ⅰ―対立軸はブランドでなければ

内田 満夫

 第48回衆院選に対する有権者の審判は、自民党・与党連合の圧勝に終わった。対立軸の提起に失敗した野党勢力は、その前に全くなすすべもない。解散・総選挙を前にしての離合集散、にわか旗揚げのドタバタ劇に、候補者はもちろん有権者もさんざん翻弄させられたあげくの野党オウンゴールである。小政党に不利な小選挙区制が導入されて久しいというのに、雨後の竹の子のごとく新党が生まれては消え、看板かけかえのようなことに終始していたのでは、いつまでたっても対立軸としてのブランドの形成、確立はできないだろう。
 与党自民党は、55年の保守合同以来の押しも押されもせぬ保守本流のブランドである。ブランドに対抗するにはブランドでなければならない。労働組合を主要な基盤とする「日本社会党」なる政党がかつて存在した。「3分の1政党」と揶揄されてはいたが、この党もブランドには違いなかった。頼りにはならなかったが、少なくとも自民党に代わる受け皿の核にはなりえたのだ。事実、連立の形で政権を担当したことが2度ほどある。その命脈は「社民党」に細々と受け継がれてはいるが、その存在感と影響力はかつてと比ぶべくもない。
 個人人気に依存した政治勢力が一時的に人気を博することはあるが、よって立つ基盤があいまいなために、いずれは消滅、埋没を免れない。自民党以外でブランドを確立していると言えるのは、今のところ「公明党」と「日本共産党」の2つだけである。公明党は小渕内閣時代に入閣以来、今や政権与党の一翼を担う堂々たるブランドである。共産党は1922年の結党以来、治安維持法下の過酷な非合法時代を生き抜いた筋金入りのブランドだ。
 自民、公明のブランド2党が与党として協力関係にある現在、それに向かう対立軸としては、消去法で残るブランドの共産党に期待を託す以外にない。しかし同党を恃みにするのはそれほど簡単なことではない。乗り越えなければならない壁があるのだ。

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