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エッセイ・コラム

神様が宿る、母校の再興

上原 利夫

 母校の開校九十周年記念事業である新校舎と新学院神社などが、十年がかりで昨年五月に完成した。私は七十年前にこの学校で三年間学んだが、戦後の学制改革において旧制中学が新制中学と新制高校として発足した頃である。私が入学した中学の旧制時代の指導精神は神道であったが、新制時代には神様に祈ることはなかった。再興された学校(学校法人浪速学院 浪速高校・浪速中学)には、正門の横に新しい鳥居と神殿が建ち、登下校時に生徒は礼拝する。八階建ての新しい校舎の屋上からは伊勢神宮が遥拝できる。
 日本人の精神の源である「神社神道」を教育の礎に、男女共学に変えた。部活ではブラスバンドを導入して明るく楽しい学園を醸し出し、茶道、華道、弓道、剣道、柔道、空手を習得、神楽部もある。
「浄明正直」「文武両立」を理念とする教育を施している。
 教育理念が曖昧な戦後でも神道を志す人はその道の大学へ進学し湯島天神や天満宮の宮司を務めている人もいる。私が入学した昭和二十二年は旧制の在校生が六百人位のところへ新制の中学一年生が三百人入学した。しかしその半数は三年後府立高校へ転出したので、中高は尻すぼみとなり、中学を閉鎖し高校だけにした。それがこの十年間で盛り返し、今は中学高校を併せ二千人を超えている。
 しかし質の問題が残る。兵庫県の著名な酒造業者らが設立した灘高校や甲陽学院は、レベルの高い生徒が集まった機会に、優れた教師による中高-貫教育を行い、進学校となった。わが母校も進学校を目指す。生徒数は目標を達成したので、これからは勉学にも努力する。幸い、神様の加護によるのか、同窓生には楽しい人がいる。私の頃は作家の藤本義一がいたし、現在では笑福亭鶴瓶がいる。NHKテレビの「家族に乾杯」で楽しませてくれる。
 先日の東京同窓会でこの十年間頑張ってきた理事長が教育改革を説明し、カネ(寄付)は要らない、生徒に向上心を与えてくれる先輩との絆が欲しい。次回は大阪でやって下さいと懇願された。

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