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エッセイ・コラム

ブラブラてくてく東京マラソン(その五、銀座四丁目~ビッグサイト)

池田 隆

 いよいよ四日目の最終日、ゴールのビッグサイトへ向う。新しい東京を象徴する臨海副都心を辿るコースである。車やモノレールを使わず、徒歩で行くのは初めてである。
 銀座四丁目を出発し、歌舞伎座の前を過ぎ、朝から大賑わいの築地場外市場の角を左折する。インド様式の壮大な築地本願寺に大勢の門徒や観光客が入って行く。入船橋で右折し、隅田川の堤防まで直進する。佃の渡しの記念碑を見て、頭上を通る高架の佃大橋に上ると、視界がパッと開けた。
 隅田川を観光船が行き交う。聖路加病院やリバーシティの高層ビルが青い空と川面に映える。高架の大通りは真直ぐに伸びているが、川を渡り切った処で佃島への階段を下りる。
 漁村の風情を残す民家や住吉神社、鉤型の堀に繋がれた釣り舟、見上げるとモダンな高層ビル、玉手箱を開けた時の浦島太郎を連想する。佃島に隣接する石川島は江戸期の人足寄場や日本最初の洋式造船所が有った場所である。今は最高級のマンション群が建ち、河岸沿いのプロムナードには花が咲き乱れ、かもめが舞う。
 近くの月島でもんじゃ焼きを食べ、再び高架の道に戻る。朝潮大橋、春海橋と渡り、豊洲に出る。IHIの造船所が一大高層マンション街に変貌している。緑化された湾沿いの公園を進むと、スクリューやクレーン、ドックのモニュメントがある。何か今のわが身と重なり、愛おしい。
 晴海通りを東雲から有明地区へ。こちらも低層住宅はなく、大きな建物ばかりである。だが従来のオフィス街や団地とは異なり、職住が混在する。都心へのアクセスも良く、道や公園も広々として住居環境は素晴らしい。土や人の臭いが余りにもしないことが気掛りだが。
 ビッグサイトの屋根がだんだん近づき、遂にゴール。
 今日歩いたルートは四百年前まで海か浅瀬だった。この広大な副都心の埋立地は江戸や東京の人々が捨ててきた塵芥で出来ている。改めて人間の営みの凄さに驚異を覚えた。

(最終日、一万五千歩、三時間)

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