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エッセイ・コラム

錦織圭君に拍手!

西川 武彦

 テニスのケイ君が快挙を遂げた。全米オープンで準優勝したのだ。技術もそうだが、試合のマナーも一級品だった。感心したのは、試合後のインタビュー。優勝したシリック選手を称えることを忘れず、通訳抜きでの目配りのある受け答えは一級品だった。
 経済大国のジャパンだが、メジャーリーグで活躍するスタープレーヤー、ゴルフ界のエース、その他の競技で、日本選手は、通訳付きで、「最高です」とか、「応援してくれたファンの皆様のお蔭です」程度の対応に終わるのがいまでも常である。情けない。
 その後、別室で行われた記者会見の模様をネットで観た。十分ほどだが、24歳の若者は、原稿も通訳もなしで、いかなる質問にも、「国際語」たる英語で爽やかに堂々と応じていた。13歳でテニス留学して、今では各国をツアーで廻っているから当然といえるかもしれないが、人知れぬ苦労があっただろう。加齢とともに感動し易くなった隠居の目頭が思わず熱くなった。

 今年になって彼が開眼したのは、コーチに17歳で全仏を制した台湾系米国人・マイケル・チャンの「ちゃん」とした指導と、専属トレーナーの働きが大きかったようだ。
 テニスの超一流選手は、セルビアのジョコビッチにはドイツのベッカー、英国のマリーにはチェコのレンドル、スイスのフェデラーにはスエーデンのエドバーグと、グランドスラムを制した名選手がコーチ役を務めている。選手もコーチもインタビューはすべて流暢な「国際語」である。
 高度成長時代、グローバルな商売のために、国際化と英語の習得が叫ばれた。筆者が勤めた航空会社でも、花の海外駐在を叶えるためには英検2級がMustというので、勉強して競ったものだ。
 今のジャパンはどうか?観光立国とやらで、オリンピックを迎える2020年に訪日外国人2000万を目指すという。そういいながら相変わらずの通訳付きのインタビュー。街中はヘイト・スピーチで騒がしい。意欲がない若者は補聴器?を両耳に、四六時中、ところかまわずスマホで自分だけの世界に浸り切る…。どうしたものやら、と隠居は呟いている。

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