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エッセイ・コラム

W杯ドイツ優勝の裏側

西川 武彦

 サッカーの第二十回W杯では、ドイツが東西統一後では初の優勝を果たした。7月14日の東京新聞夕刊によれば、今大会でプレーした同国代表の三分の一は二重国籍という。攻撃のタクトを振ったエジルはトルコ、守備のとりでとなったボアテングはガーナ、ケデイラの父親はチュニジア、クローゼはポーランド、ムスタフィはアルバニアからの移民等々…。
 2000年の国籍法改正で増えた二重国籍の選手の持つテクニックや独特のリズムを積極的に代表に取り込むことで、長い低迷から復活したらしい。純血?のわがサッカー代表は一勝も挙げられずに敗退した。
 ドイツを含め欧州では雇用不安などを背景に移民への排他的な感情が広がっているものの、今回のような活力の復活があるのも事実だ。

 先月十年ぶりにフランスへ旅した。医者の勧めで赤ワインを飲んでいる。その故郷・ボルドーのシャトー(酒蔵)巡りが主目的だったが、華の都パリにも数日滞在した。いつものとおり、メトロを乗り継いで街を探訪していてちょっと驚いたのは、乗客にアフリカ系が増えたことだ。十年前にはなかった郊外路線などでは八割方がそうだった。アジア系も増えている。どこを旅しているのか分からなくなるほどだ。彼らはフランス語を喋っているから、旧植民地から移住した労働者なのだろう。
 古い知り合いに、中心街で旅行者向け免税店を経営している女性がいる。訊くと、ジャルパック時代は大分前に終わったみたいで、日本の方が団体で来店することは、ほとんどなくなったという。
 少し前まではロシア人が沢山来たが、この頃は中国からのお客様がぐっと増えたとか…。中国人の店員さんが中国語で接客していた。
 石造りの街だから、姿かたちに大きな変貌はないが、お国の住民や旅人は相当変わっているようだった。

 なにかと姦しいジャパンだが、少子高齢化が避けられない時代に、伝統文化を守りながらも、外国人を巧みに受け入れて国の活性化を計れないものだろうか。

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