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エッセイ・コラム

予想外の展開(世田谷美術大学体験記①)

福本 多佳子

 5月から世田谷美術館主催の教育プロジェクトの1つ、「世田谷美術大学」に週2回(火木10時半~午後4時半)通い始めた。今年が27期という半年間の大人のための美術学習プログラムで、1クラスが20名で3クラス、20代後半から70代の男女で構成されている。
 入学式、オリエンテーションの後、各自が用意した似顔絵、趣味を記載したカードがコピーされ全員に配られた。講堂は名刺交換をかねての自己紹介の場に変わった。次の日には1人1人が皆の前で3分ポーズをとり、クロッキー。早く同期生の名前を覚えるという狙いで、中々楽しい企画だと感心した。
 実技基礎編は木曜の実技クラスのオリエンテーションといった構成で、各自持参のリンゴを前に3枚の画用紙が配られた。1枚目はバッグに戻したリンゴを思い浮かべながらのスケッチ、2枚目は机の上にとりだしたリンゴを注意深く観察、特徴をメモした上でのデッサン。3枚目は渡された青、赤、黄の3原色アクリル絵の具で色鮮やかなリンゴを描き、全員がその3枚の作品を画架にかけて並べる。3枚の絵の違いを見るわけである。
 3週目から木曜の実技は3クラスに分かれ、1組は7週を絵画、2組は木彫、私が属する3組は映像制作が3回に、銅版画が4回という構成で、12月までに4種類の実技クラスを終えることになる。
 火曜日は美術史。これまで漠然と理解していただけの遠近法についての講義が良かった。ルネッサンス期の美術作品の映像を見ているとイタリアへの美術鑑賞旅行を実現したいと思った。美術史後半はマテリアルを中心とした絵画史で、映像を見ながらフレスコ、テンペラ、油絵への変遷をたどった。実際に顔料を卵黄で溶き、テンペラ画技法によるリンゴを描いた。油絵作品との違いを目にし、これまた興味深い授業内容であった。
 映像クラスは3グループに分かれ、1回目は各自が記憶に残る1シーンを考え、仲間に演技してもらいカメラ撮影をする。2回目はグループで1つのシーンを考え、1コマでの撮影と数コマで撮影した作品との比較。3回目はグループで簡単な小道具、衣装を用意しての卒業作品であった。最初、固い表情で渋っていた高齢者もグループ制作が始まると、迷わず演じ始め、柔らかな表情に変わっていった。若者よりも生き生きと自然な演技を披露する。私自身も同様でカメラの前で、自然と台詞が口から出て来るのだ。講師から「Aさんに見本演技を見せてやって」と言われた時も「えっ?」と思いながらも迷わず口から台詞が出て来て、相手役の手を握っていた。「これって人生経験の賜物かしら?それとも図々しくなっただけ?」。うれしい疑問だった。

 意外な展開となった映像クラスに引き続く銅版画クラスの初日。前もって手渡されていた「見ながら作れる!銅版画入門」の冊子を手に「読んでも分からない……」と皆がつぶやいていた。それでも、講師の指導に沿って(これでいいのかな?)と考えながらの制作が始まった。夏休み前の講評会までに無事、何点かの銅版画が完成、刷り上がったばかりの個性ある作品を前に、それぞれが満足げな表情だった。
 絵画クラスの講評会を覗いてみると、テーマである葉っぱの独創的な絵だけでなく楽しい3Dアート作品も展示されていた。卒業後には皆でグループ展開催や、アーティスティックな大人の絵本を作れるのではというアイデアが浮かんできた。

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