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エッセイ・コラム

アートとコンピューター

福本 多佳子

 昨年秋から、何度か勧められていた100号(1621mm x 1303mm)の油絵を描き始めました。「100号サイズのキャンバスを保管するなんてとんでもない」と、ずっと躊躇していたのに「やはり、一度は…」と始めてしまったら、予想以上に夢中になっています。

 大作を手がけるということは、これまで以上に「背景に何を描くか? 構図は? 表現したい事は何?」思考の時間が増えてくるにつれ「…頭を使っての作業は疲れる…」と感じていて、我が家にいたシェパードが訓練から帰ってくると、バタンキューと倒れ、グオーと大いびきをかいて寝ていた姿が目に浮かびます。

 構図を考えるにあたってはiMacの前に座り、Google Imagesから絵を描く為の素材となる画像を探し出し、downloadして、必要に応じてPhotoshopで編集する。クラスでは左手に画像が入っているiPadを持ち、右手で絵筆を持ってキャンバスに向う。絵画用に撮影する写真も多くなり、Photoshop、あるいはiPhoto上で編集しiPadに送る。勿論、iPad上で編集、撮影する写真も増えて来る。

 現在制作中の絵は実物モデルとGoogle Imagesから見つけた人物画像を組み合わせています。これまではモデル無しにキャンバスに人物画を描く事は考えたことも無かったのに、今回、ネット上の画像を基に描いた人物像の方が、生き生きとしていることに気がつきました。実モデルは同じポーズのはずでも違いが出て来るので、微調整しながら描かなければならない。表情の乏しいモデル(退屈でしんどい仕事なので明るい表情を期待することは難しい)より画像モデルの方が表情豊かでイメージを拡げやすい。さらなるメリットはiPad上の人物は容易に細部を拡大しながら描けます。

 東京国立近代美術館でのフランシス・ベーコン展での説明に、彼は友人、知人でも写真から描くことを好む画家だったとありましたが、今回の作品制作で「納得」と思いました。

 勿論「有名画家が好んだモデル」という話にあるように、何かを感じさせる、描く気持ちを高めるモデルも数多くいます。(アメリカでは楽しんでいる雰囲気のモデルが多かった…)

 不思議なもので、100号キャンバスに向かい常に構図を考える習慣が出来ると、描くということに対する姿勢に変化が芽生えているようです。今まで避けていた写生旅行を5月末に実現してみると、楽しく作業出来たのです。今後の課題は荷物を最小限ですませながらcomfortableに描く為のセッティングを工夫することでしょうか。

 重い道具を持って行く以上、それなりの下準備をと、先ずは2日間のクラスに参加、その後、連休中に風景画の描き方の研究をとネットで世田谷、目黒区図書館の蔵書を調べてみると、世田谷区の鎌田図書館にアートの教本が多いことがわかり5冊の絵画関連の本を借り(自分の本棚へ)と思った本は、帰途、大型書店で買い求めました。

 そうした準備のせいで風景画にも興味が湧いて来たようです。その絵を滞在先の友人にメールすると「良いじゃない! 次は甲斐駒の四季に挑戦してみたら?」と言われ、アメリカの親友からは「売ってくれない? 引っ越したばかりの私の家に壁に飾りたいから」と聞かれました。流石、アメリカ人、好きと思うと気楽に買いたいと言う人がいます。「勿論、Housewarming giftにするわ。ただし手直ししたい部分があるから待ってね」という返事を出しました。

 アメリカの友人から「Facebookのページを充実しろ」とか「会社のサイトをクローズしたのはわかるけど、何故、個人のWebsiteを再開しないのか?」と言われます。「そのうちね…」と言ってから(もう何年?)仕事で仕方無しにやっていたことは、自由になってみると、中々その気になれないものです。だって、その当時は絵を描くという事は10年以上も封印していたわけですから…。それに友人がメールや電話で話をする時に当然、彼女のブログを私がきちんと見ているという前提で話をされると(ちょっと待ってよ)という気分になってしまいます。この辺も影響しているのでしょうか。まあ、サイト再開を念頭に写真を編集、整理していたのが、もう増え過ぎてしまい、その為にPCに向かうのは「さて、何時になることでしょう?」

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