作品の閲覧

エッセイ・コラム

「遂にやったぁ!」

西川 武彦

 数日前、TVニュースをみていて、あっと驚き、次の瞬間、小さな快哉をさけんでしまった。エベレスト登頂ではない。墜落する方である。
 新宿駅のプラットホームで、スマホに夢中の小学五年生が、すとんとレールに落ちてしまったというのだ。幸い電車には轢かれなかったものの、駅では慌てて注意のチラシなどを構内に貼ったという。
 両目に加えて、両耳は、ミュージックを聴くため「耳栓」で塞がれていることが多い。人様にまったく無関心で、勝手気ままに振舞っているのだ。
 街中で、駅のエスカレーターや階段で、スマホに無我夢中の連中を眺めて、事故事件が起きないものかと、いらいらしていた昨今だったので、「遂にやったぁ!」と叫んでしまったのだ。その日の夕刊では、同じ「落下事件」は、年間で20件もあると報じていた。
 次の日には、最寄の私鉄の駅で、マイクがスマホなどへの注意を促がしていた。騒音が一つ増えたようだ。駅や車内でのアナウンスが多すぎるので何とかならないものかと、私鉄出身の友人に質したところ、警戒注意報を出さないとクレームがつくのだ、という。海外では考えられないジャパンの過保護、甘やかしの悪弊だと筆者は思うのだが……。

 昨日だったか、今度は電車に乗ろうとした若い女性が、プラットホームと電車との隙間に転落したという事故が報じられていた。
 駅員はなにか物が落ちたようだが、ドアが閉まりつつあったので、発車したあとホームから拾えばよいだろうと思って、動きだした電車を見送ったという。落ちていたのは人間様だったのに。幸い無傷で助かったとはいえ、情けないやら、嘆かわしいやら……。

 こんな世情のなか、政治の世界では、政界では、与太が軽々しくも賑やかに飛び交っている。改憲、原発再開、アベノミクス(「アホノミクス」と呼ぶ識者もおられる)……。

 むしゃくしゃしてきた。最後に、兼題『狂う』で筆者が詠んだ川柳をご披露して筆を置きます。「政界はナビが狂って右ばかり」(酔雅)。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧