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エッセイ・コラム

安倍内閣と霞が関との関係

大平 忠

 第一次安倍内閣はわずか一年の間によく働きいくつかの成果を上げた。特筆すべきものの一つは「公務員制度改革」に対する意気込みであった。
 渡辺喜美行革相とのコンビで、たいへん頑張ったと今でも思う。ここでの検討結果を踏まえて、2008年6月、福田内閣になって、「国家公務員制度改革基本法」は成立した。残念ながら麻生内閣になって大きく後退し、民主党政権になるや政治主導は空振りし、ついには(官へ)丸投げ内閣とか(官に)飲みこまれ内閣とかいわれるようになってしまった。これは、政治家の限界と同時に、官僚の行政に対する力を、改めて国民に明らかにしたといってよい。

 渡辺喜美は、麻生内閣時に、自民党に愛想をつかし、「みんなの党」を立ち上げた。党の目標は一貫して「霞が関改革・規制改革」である。
 一方で、大阪の橋本徹は、かつての渡辺行革相の下にいた堺屋太一、原英史、古賀茂明を集めて、地方と中央との壁を突破すべく維新の会を立ち上げた。安倍首相は、彼等と五年前には同じ釜の飯を食っていた仲である。橋本は安倍を総裁にと動いたこともあったくらいだ。

 さて、今日1月13日、安倍内閣と霞が関との関係はどういう立ち位置(最近政治家はこの言葉をしっかりと共によく使う)であろうか。
 安部首相は、今まで公務員制度改革に触れて突っ込んだ発言はしていない。内閣の行革大臣を見ると、町村派の稲田朋美である。町村は、かつて麻生内閣官房長官として、公務員制度改革を逆行させた主犯であった。稲田行革相新任の挨拶は、「公務員が国民のために仕事をするためにはまずその士気が上がらないと駄目である」との内容だったと思う。
 さらに、麻生副総理が鎮座している。「官僚を政治家は使いこなせなければいけない」とよくいう。これは麻生の場合に限って、「官僚と仲良くしなければならない」と聞こえて仕様がない。

 安部は、以前の官僚に警戒された感じを拭おうとのポーズが明らかである。官僚にまず働いて貰わないと何もできないからだ。ましてや参議院選挙が控えている。かつて参議院選挙で自民が大敗した原因の一つ、社会保険庁の記録紛失問題も、安部の足を引っ張る自爆ではないかといわれたぐらいである。

 恐れるのは、「みんなの党」とか「維新の会」があまりにも早急に霞が関改革の法案を提出することである。安部としては、もっと先で、腰を入れてやりたいのではないか。これはやはり、長期政権の目途がついたところでじっくり腰を据えてやるべき案件であろう。憲法改正問題と同様である。渡辺、橋本とどこまで気脈を通じさせることができるか。

 安部は、視線を高く、内外の敵を懐に入れながら、時の来るのをじっくり待つ心構えをしているに相違ない。安部贔屓の私は、そう思っている。

(平成25年1月13日)

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