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エッセイ・コラム

超大国となった隣人

平尾 富男

 お騒がせ暴走老人の元東京都知事が引き金を引いて、功を焦った総理大臣による小さな島の国有化宣言の稚拙な決断が原因で、お隣の超大国とは外交関係が冷え切った状態にあります。

 その中国では、対日強硬派の習近平党総書記の新指導部による体制が動こうとしています。旧指導部下でも、反日学校教育と抗日戦争テレビ番組で国民を洗脳していたことは周知の事実です。
 面白いのは、抗日戦争で「中国紅軍が連勝連戦だったと報道する一方、日本軍のために3,500万人もの戦争被害者が出た」と言う矛盾を、中国人がブログで書き込んでいたことです。
 矛盾といえば、中国の外務大臣が9月に行われた国連総会での一般討論演説で尖閣諸島に言及し、「敗戦国(である日本)が(戦勝国である)中国の領土を盗んだことは、戦後秩序に対する重大な挑戦だ」と強弁しました。(一方で中国当局は、尖閣諸島は台湾に領有権があるとも言及しているのですから、最終的には台湾を含む支配が目当てなのでしょう)

 それでは一体、日本政府が「何故敗戦国である日本が長きに亘って、戦勝国中国に経済援助をし続けたのか」と投げ掛けなかったのかも問題です。「敗戦国が戦勝国に経済援助をした例は寡聞にして存じあげません」と発言すべきだったと、中国人の良識ブロッガーが指摘していました。  日本政府は中国に対し、既に総額3兆円を超える経済援助(ODA中心)を行っています。その上で、20年以内に世界第一の経済大国になるとの予測も出ている中国に対して、2012年だけでも4億5千万円の「援助」が行われているのです。  中国のウェブサイトに掲載された中国人のコメント、「もう中国には経済援助をしないでください。市民はそれを見たことも使ったこともない。どこに行ってしまったのだろう。もしかして幹部らに使われたのではないか」に一抹の救いを感じてしまいました。

 ワシントンポスト紙の対日本悲観論の記事にも、「日本人は自己批判が好きで、中国人のように自己主張・宣伝をしなさ過ぎる」(堀義人)とあったことが思い起こされます。日本政府も然ることながらジャーナリズムにも責任がありそうです。

(2012年11月29日)

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