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エッセイ・コラム

ロンドン・オリンピック開会式

都甲 昌利

 私はオリンピックでは開会式を見るのが好きだ。それは主催国が最も力を入れ、その国を世界にアッピールするのに絶好の機会だからである。東京オリンピクの時、聖火輸送に携わった関係で、ギリシャから運ばれた聖火がいろいろな人々によってリレーされ、最終的にオリンピック・スタジアムの聖火台に点火され開会宣言がなされる。この瞬間が大好きで、どのような形で点火されるのだろうかと心をときめかしながらテレビを見ていた。東京オリンピックでは最終ランナーは原爆投下の日、広島で生まれた青年だった。「世界の平和と発展」というメッセージを世界に発信した。
 私は最終ランナーはベッカムかウイリアム王子ではないかと予想していた。普通の人なら世界中の誰でもが知っている名前だからだ。この単純な予想は見事に外れた。
 それでもベッカムはアテネから運ばれた聖火を最初に受け取ったし、開催当日は船でテムズ川を下り会場まで運んだ。誰に引き継がれるのだろうと思ったら、一人ではなく聖火は過去のメダル保持者7人に引き継がれ会場内入って行った。スタジアムに入ると今度は未来のメダル保持者になるであろう若者にトーチは渡った。若者たちはめいめい7本のトーチを掲げて聖火台に近づく。通常イメージする高い聖火台ではない。長い鉄棒の先が花びらのようになったトーチが、参加国数と同じ204本が水平且つ放射線状に並べられていた。その円形を囲むようにして7人の若者が花びらに一斉に点火をした。炎が燃え上がった。円形の灯の輪ができた。こんな平らな聖火台はおかしい思った瞬間、水平だった204本の鉄柱がそろそろと起き上がって、垂直になり灯が束ねられ巨大な円柱の聖火台になったではないか。これには参った。
 ジェームズ・ボンドとエリザベス女王に扮した役者がパラシュート会場入し観客の度肝をぬいた。エリザベス女王が86歳とも思えない力のこもった美声で開会を宣言された。
 この開会式の総監督演出はアカデミー監督賞を受賞したダニー・ボイルと聞けば、平凡な人間では予想もできない人々をあっと言わせるのも頷ける。
 ミュージカル『キャッツ』、『オペラ座の怪人』などで知られているアンドリュー・ロイド・ウエーバーが今回の開会式の演出を任されていたらどんな開会式になったのだろうか。

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