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エッセイ・コラム

アップルストア銀座

福本 多佳子

 昨年8月に渋谷のアップルストアでiMacを購入した。直営店でのMac Computer購入者には9800円で1年間個人レッスンを好きなだけ取れるというOne to One Lessonというサービスがある。「購入時だけに与えられる一回限りの特別サービスです」というので、買ってみることにした。

 Macを初めて使うユーザーであればStep by Stepでレッスンを取ればいいのだが、1998年頃からはWindows PC Userに変わってはいたものの、常にMacが身近にあり、多少は使い続けていたので、質問事項がいくつか溜まると予約を入れ、3回ほどレッスンを取ってみた。自分で質問を探すより、逆に新iMacの何を学ぶべきかを掴む方が効率的と考えインストラクターにグループレッスンの事を聞いてみた。「グループレッスンはもう実施されていません」の一言だったので、その後、渋谷店に立ち寄ることなく半年以上経っていた。

 ところが、今年5月にiPad2をアメリカのサイトで購入したことが、アップルストア銀座に通うきっかけとなった。Ex-husband のBobがiPad2をアメリカのサイトで注文して彼のアパートに届くように手配すれば、2002年に彼が東京で撮影した母の葬儀ビデオをSONY CamcorderのカセットテープからiPadに取り入れてあげると提案して来たのだ。先ずはmovieをiMacに取り込み、その後iPad2用のフォーマットに変換して取り込んでくれた。コンピューター用としてはQuick Time Movieに変換したBackup Fileを入れた外付けハードディスクを送ってきてくれた。38本のmovie fileの内、何本かは90年代に撮影されたもの。10年以上たってやっと鑑賞する機会が与えられたことになる。
 ファイルをiPadに取り込むにはiMacと同期する必要がある。東京で私のiMacとiPad2とを同期する際のトラブルを避けるために、彼自身は必要最小限だけをmanual transferをしたとSKYPEで連絡してきた。そして、iPad2が届く前にアップルストアへ行ってiMac-iPad間の同期のやり方を学んできた方が良い。明日渋谷のアップルストアで30分のiPad2のワークショップがあり1席空いているからすぐに予約するようにと言ってきた。

 アップル渋谷の予約を入れる段階で、翌日の用事を思い出し、銀座ストアのページにアクセスしてみると、その日の午後のワークショップがあった。「たった30分のワークショップの為に、片道1時間近くかけて銀座に行くなんて」とつぶやきながら急ぎ銀座店へと向かった。これまで1階スペースには入ったことがある。ワークショップは3階ですと言われ、各階止まりにセットされたエレベーターに飛び乗った。2階は本、ソフトウェア、アダプターといったアクセサリー類の売り場、3階にこじんまりとした居心地良い映画館といった雰囲気のワークショップホールがある。空席に座るとiPhoneのワークショップが終わるところだった。次の30分が「iPad2をはじめよう」そして、引き続き30分の「iPad2を使いこなそう」というスケジュールになっていた。最前列の席に移り、結局、この日2つのワークショップに参加出来、銀座まで来た甲斐ありと思った。
 終わったところでインストラクターに質問をした。1つはiPad2をアメリカのサイトで購入した際に作成したApple IDと日本でiMac購入時に登録したApple IDとの2つをキープしていること。2つ目は最初に他のコンピューターでiPad2との同期をした事により、私のiMacでの同期作業に問題を引き起こす可能性があるかないかという質問であった。「本来的には1コンピューターと1iPad2の同期を前提としているので、問題が起きる可能性がありますね。ここにiMacをお持ちになれますか」と訊ねられた。

 後日、4階のGenius barの予約を取り、デスクトップiMacをアップル銀座に運び込んだ。担当者はアメリカ人男性だった。Apple IDに関しては「2つともキープした方が便利ですよ。僕もアメリカのアップルストアからダウンロードする時にはアメリカのID、日本のストアからのダウンロードには日本でのIDを使っています。General Settingsを開いて、その度に設定を変えればいいんですよ」 そう言ったあと、アメリカから持ち帰った外付けハードディスクからiMacが立ち上がらないという問題点を診てくれた。丁度よい人に当たった。ワークショップではApple IDはひとつだけにした方が良いと勧められていたけれど、より実際的なアドバイスをもらう事が出来た。この日は5名の欧米人スタッフがGenius Barで働いていた。

 別の日、銀座での用事の後、他の興味あるワークショップにも参加してみた。早めに席に着くと最初に参加した「iPad2を使いこなそう」が行われていた。ただし、この日は以前と異なり30分ではなく、両ワークショップとも1時間ずつとなっていて幅広いコンテンツを紹介、新しい情報が飛躍的に増えていた。最初の時には英語の本をダウンロードするiBooksしかないので、簡単に読める無料の英語本をダウンロードしてお楽しみくださいと紹介していた。その日は日本語の本の為のiBunkoHDの紹介と、copyright切れの森鴎外、夏目漱石、芥川龍之介といった作家の本が無料でダウンロード出来ますという紹介に変わっていた。すぐに若い頃に読みそびれていた本をダウンロードしてみた。

 目的のワークショップが終わると、Photoshop その次にIllustratorのワークショップと続いていた。結局4時間ぶっつづけでメモを取り続けた。これを機会に、渋谷店には無かったグループレッスン、さらにOne to Oneレッスンも取ってみた。ワークショップで紹介されたAutomatorで百枚の写真を一遍にPDFに変換し、iBooksの本棚に置くことが出来ると説明された内容を確認したいと思った。

 銀座でのOne to Oneレッスン時に、同じテーブルでレッスンを受けていた女性に「貴方と会ったことがあると思います」と言われ、改めて顔を見た。「NYUね。Dr. Austinが東京にいらした時はランチをご一緒したわ」と答えると、その女性は「きゃー」と言って、立ち上がって私の方にとんで来た。1994年以来の再会であった。2人のインストラクターが「偶然ですね。めずらしいこともありますね」と笑顔で言っていた。

 アメリカのアップルストアでは経験したことのない、銀座の劇場スタイルのワークショップは素晴らしい。アップル社員ではないけれど、一度、立ち寄ってみたらと友人に勧めている。ここのワークショップは常に新しい内容を取り入れているので、同じタイトルのワークショップでも、その度に目新しい事を学べると確信した。

 最近アメリカでWalter Isaacsonが書いたSteve Jobsの伝記が出版された。アメリカから電子図書としてのPDFフィイルが添付されて来た。早速、iPad上にも同期し、時間に余裕が出来次第、読み始めようと楽しみにしている。

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