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エッセイ・コラム

はやぶさと麻布のスーパーが残したもの

高口 恵子

 毎年、この季節になると、バターナッツ南瓜のポタージュスープが恋しくなります。
 みなさんはこの瓢箪のような南瓜をご存じですか。かく言う私も、この料理法を麻布のスーパーで野菜売り場を担当しているTさんから、昨年教えて頂いたばかりです。
 まず、薄皮を剥き、乱切りにして蒸し、裏ごしして、牛乳、生クリーム又は豆乳と水を入れ、あとは塩、胡椒で味を調えます。後は、戴くだけ。なんとも言えない甘味とナッツの風味が口の中でふんわりと豊かに広がるのを、白ワインとともに堪能します。時に、クランベリー入りのライ麦パンを添えるのも粋な感じです。
 ところが先月、この南瓜を初めて買ったスーパーが建物老朽化のため10月末で閉店する旨DMが届きました。これは早々に駆けつけなければと思い、買い出しに出かけました。売り場に着くと、あった、あった、ありました。しかし、うん?この形、瓢箪にも似ていますが、つい最近、別のところで見かけたような?そうだ!あの小惑星探査機はやぶさが目ざした小惑星イトカワにそっくり。昨日の講演でダンディーなニュートンの編集長が「イトカワはラッコに似ていると言われています。」とお話しして下さったものの、私が観るに、この掌に載っている南瓜の方がもっと似ている気がしました。そうすると、目の前にある南瓜を持ち帰り料理するのが、何故だか急に惜しくなってきました。
 小惑星イトカワとバターナッツ南瓜
 何の関連性もない二つのものが今私の頭の中でしっかり結びついてしまいました。
 これだから、人生、色々なことに想像力豊かに好奇心を持って、何でも観ていくと面白くてワクワクしますよね。
 そうこう思いを巡らせているうちに、カプセルを送り届け散っていった小惑星探査機はやぶさと約50年間の歳月を経て老朽化し取り壊されるこのスーパーの建物も、一つの使命を見事に果たし、皆に惜しまれながらもさよならを告げているような気がする暮秋のみぎりでした。

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