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エッセイ・コラム 政治・経済・社会

赤道を跨いだ

富岡 喜久雄

 ニュウジ-ランドで地震があり日本人が閉じ込められたとの報道があった。日本列島は地震多発地だ。以前友人がアイスランドの噴火の写真をメールで送ってくれたことを思い出した。闇に赤いマグマが噴出しているのや、人家に降り注ぐ噴煙、それを避けるように逃げ惑う牛と人間やらの連続写真が迫真的で、紅蓮のマグマは地球の怒りを思わせた。その時地球の軸もわずかにずれたという。地軸のずれといえば現役時代に赤道線を跨いだことがあるのだが、あの分岐線はどうなっただろうかとその時気になった。エクアドルの首都キトには赤道の碑があり、その碑に沿って赤道線が引かれて訪れた人は誰でも両足を開いて南半球と北半球を股に懸けることが出来る。観光スポットになってはいても、わざわざ海抜三千メートルの地まで赤道を跨ぐだけに来るものはいない。私も仕事のついでにやってみたのだ。街の背後にはアンデス有数の火山ピチンチャが鎮座し、その白い頂は神々しいばかりに美しかった。それが建造物を揺らして当時施工中だった工事に瑕疵問題を起こしてしまったのである。
 発端は地震でも単なる施工瑕疵でなく、原因は複雑で数年がかりの大問題になって苦労した思い出がある。これも地球の揺れが起きなければ問題にならなかっただろう。

此処のところ火山は噴火するし地震もあって日本列島もおかしい。気候も激しく変動している。八王子の郷土史である桑都日記には天明三年の浅間山大噴火とそれに続く飢饉の発生が記されており、また同時期にヨーロッパでもアイスランドの火山噴火があってフランス革命の原因となったとの説もある。今回の彼の地の地震や遠いヨーロッパの噴火が日本に関係しないものでもない。どうするか。自然現象だからと座視するか。いやこの際我々も便利さに囲まれた生活を反省し、ナチュラルな採取自足の里山暮らし覚悟したほうがよさそうだ。それが流行のロハスだし、地球に優しい。さすれば地球の怒りも収まるかもしれない。

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