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エッセイ・コラム 政治・経済・社会

日米の意識のねじれ

野瀬 隆平

 日本の内外で起こる様々な事件を考えている内に、日米安全保障条約に、改めて強い関心を抱くようになった。

 締結から50年、安保条約についての日本人の考え方も、時代と共に変わってきたが、それ以上に、日本人とアメリカ人との間には、捉え方に大きな違いがある。当然といえば当然のことであるけれど、朝日新聞が両国で同時に行った世論調査の結果をみて、今更ながらこのことに気づかされた。

 先ず、米軍が日本に駐留することについて、多くの日本人(42%)は「日本を防衛するため」と思っているが、6割のアメリカ人は、「アメリカの世界戦略のため」と考えている。ちなみに、1999年に行った調査では、約半数のアメリカ人は「日本が軍事大国になるのを防ぐため」と答えていたのである。日本人とアメリカ人が、お互いに相手国の存在をどう見ているか、意識のずれがよく表れている。日本人が期待しているほど、アメリカ人は日本を守ることを第一義的には考えていない。

 しかし、両国民の考えの違いには次のようなものもある。「いざという場合、アメリカは本気で日本を守ってくれると思いますか」の問いに対して、日本人の46%が「思わない」と答え、「思う」の41%を超えている。多くの日本人は、いざというとき必ずしもアメリカは守ってくれない、と冷静に受け止めている。

 興味深いのは、これに対してアメリカ人は、「日本が他の国から攻撃された場合、アメリカは、全力で日本を守るべきだと思いますか」との問いに対して、何と7割近い人たちが、「全力で守るべきだ」と答えている。アメリカ人らしい正義感の表れなのか。防波堤としての日本を守りたいのか。いや、その本音は、4万人とも言われる在日米軍の命を守るためだ、と正直にいうアメリカ人もいる。

 いずれにせよ、自分の国は自分で守るという強い意志と具体的な備えがなければ、複雑に多極化する国際社会の中で、真に自立した国として存続し得ないであろう。

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