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エッセイ・コラム 科学技術

金星探査機「あかつき」の失敗

上田 信隆

 金星探査機「あかつき」の失敗が報じられた。6年後に再チャレンジするという。私は日本の技術水準について詳しく物をいえる立場にはないが今回の国民の期待は「はやぶさ」の成功にあったのではないかと思う。同時に科学予算の仕分けの精査などの牽制もあって200億以上の実行した感があったがあまり批判をあびずにすんでいる。

 しかし失敗についてはやはりそれなりの批判があってしかるべきだろう。もとを正せば「はやぶさ」の成功も偶然のつみかさねだという見解もある。予定より数年延びて地球に帰還した「はやぶさ」の奇跡を手放しで喜びその成果をマスメディアも含め喧伝してきた。しかし私はある日突然に成功の報道に少なからず違和感を感じた。できれば途中経過を発表しつつ苦戦の連続を報道していればもっと国民は素直にその成功を評価したに違いない。公開の原則は時には当局者には厳しいこともあると思うが公平を旨とする民意にとっては公開が原則であると思う。NASAは常に公開をしているように思われる。

 私は今回の失敗は結果としては残念に思うがプロセスについてはよかったと思う。同時にアメリカとの連携やNASAの技術の水準も推し測られて科学にたいする見方に参考になったと思う。国民の理科離れを考えれば200億の予算など安いものと思う。世界一でなくてはならないとは思わないが少なくとも世界に貢献できる技術は大切にしたいと思う。それだけに堂堂として研究に邁進して欲しい。研究は積み重ねの努力を必要としているが研究成果にたいしても出来るだけ正確な評価を期待したい。ややもすると大衆受けすることや利益の追求になりやすくマスメディアは報じているがマスメディアにももっと地道な調査分析を期待したい。

 「あかつき」の研究人には今回のチャレンジに改めて拍手を送りたいと思う。この失敗を次なる成功への第一歩にしていただきたいと思うからだ。公開の場で成果を論じることが日本の科学人への大きな後ろ盾になるのではないかとさえ思う。

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