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エッセイ・コラム 科学技術

宇宙開発と宇宙飛行士

稲宮 健一

 野口さんが国際宇宙ステーション(ISS)の長期滞在から帰還し、また、時を同じくして、「はやぶさ」の帰還で、いやが上にも宇宙への関心が盛り上がた。この為、多数の小学生が宇宙飛行士に憧れを持った。

 ここで、前者の有人と、後者の無人の宇宙開発間に大きな開きあることを述べたい。

 宇宙旅行は人類の共通の夢だった。1903年ロシアのツオルコフスキーがその夢の実現が可能である理論を示した。戦後の一番のエポックは東西冷戦の真っただ中、1957年、ソ連がスプートニクを打ち上げたこと。これを契機に、米ソ間で激烈な宇宙開発競争が始まった。1961年にソ連のガガーリンが世界初の宇宙飛行士になり、米国はアポロ計画によって、1969年アームストロングが月面に到達した。

 この時代の宇宙飛行士は米ソ共に軍人で、相手国に先んじることを目的として、国の威信を負って、肉体的、精神的に人間の限界に挑戦した。

 アポロ計画の成功に気を良くして、1980年代のレーガン政権が西側の結束と科学技術の誇示を狙って、日米欧の主要国によるISSの構想を提起し、逐次建設が進み、さらには1991年にソ連の崩壊を経て、ロシアも主要メンバ加わり、現在に至っている。

 ISSは人間が介在する無重力環境下での各種科学実験や、宇宙飛行士の長期滞在の基礎資料の獲得などを目的とした。しかし、この成果は直ぐに将来の開発展望に結び付くものではない。各種の科学実験は無人で代替が可能であり、長期滞在の実績は次に来る有人の月や、火星の探査の序論にすぎない。

 宇宙環境は宇宙服の外は真空で、日照面は約200度C、日陰はマイナス約100度C以下という過酷な環境である。さらに、火星探査では、到達に半年、帰還の時期を調整するため滞在が約1年、帰路が半年かかる。

 「はやぶさ」の実積が示すように、火星探査は無人で十分目的を達成できる。単に青い地球を見たいという憧れで、宇宙開発を見るのでなく、より高度なロボコン技術の延長でもっと豊かな成果が期待できると考える。

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