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エッセイ・コラム 政治・経済・社会

シンガポールと日本の首相

三宅 劭

現在、国民を無視した民主党の代表選の権力争いが繰り広げられています。小沢一郎・菅 直人の何れが新しい首相に選ばれても、これまでの実績を見ると我が国の将来は余り期待できそうもありません。

マレーシアから独立して丁度50年のシンガポールは、初代首相リー・クアンユーの英知を持った素晴らしい政治が続き、国民一人当たりのGDP(購買力平価基準 2010年、IMF推計)では日本がUS$33,478(25位)なのにシンガポールは躍進してUS$52,840(4位)、スイスの有名なビジネススクールIMDが毎年発表する国際競争力ランキングでは日本が27位と順位を下げているのにシンガポールは米国を抜いて第1位と素晴らしい国になっています。

この50年間、シンガポールの首相は初代リー・クワンユー、2代目のゴ-・チョク・トン、3代目のリー・シェンロンと僅か3人です。シンガポールが独立した1959年は岸内閣の時ですが、それ以来日本の首相は毎年のように替わり、現在の菅 直人首相は25人目の首相です。50年間の日本の首相の顔ブレを見ると、岸―佐藤の兄弟・福田親子・吉田茂の孫麻生太郎の他、世襲が目立ちます。シンガポールの現首相は初代首相の長男ですが、親の七光ではなく実力で選ばれた実力の持ち主です。

この50年間の25人の首相で先進国並みに4年以上首相の座にあったのは、佐藤栄作・小泉純一郎・中曽根康弘・池田勇人・岸 信介の5人だけです。小泉以降の安倍晋三・福田康夫・麻生太郎・鳩山由起夫は何れも1年前後、宇野宗祐と羽田 孜の二人に至っては僅か60数日です。これでは諸外国に信頼される筈がありません。

シンガポールで記憶に残るのは、1989年の訪問時のことです。激しい雷雨が止まず、喫茶店で1時間以上雨宿りをしていた時、話し合っていた向いの席の青年が突然怒り出したことです。私がびっくりしていると
「われわれ国民が父と仰ぎ、まだ健康で続投を望んでいるのに来年引退するのは国民に対して失礼だ」
というのがその怒りの原因と分かり驚きました。

私は、独立直後の1962年頃から度々シンガポールを訪れ、その都度国が良くなっているのでシンガポールの素晴らしさを理解しているつもりでしたが、一人の外国人に向かってこのようなことが言える国民は幸せだと思いました。

2010年9月6日 三宅 劭

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