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エッセイ・コラム 政治・経済・社会

高い日本の有料老人ホーム

三宅 劭

 6月17日の月例会の資料で、稲毛市郊外の「スマートコミューニティ稲毛」という高齢者施設を知りましたが、6月18日の日経朝刊には広告が出ていました。日本の有料老人施設としては珍しい所有権のある分譲方式です。

 70.12㎡の部屋の分譲価格は約2000万円で、50㎡位の部屋の一時入居金(15年位で償却)を支払う一般の有料老人ホームに比べると安いほうですが、管理費14,000円、修繕積立金10,500円の他、スマートコミュニティヘの一人約200万円の入居金と月89,000円(朝夕食費用を含む)がかかります。夫婦二人で入居すると約2400万円の一時金と月々の費用が約20万円です。

 見学会に参加しないと正確なことは分りませんが、万一介護が必要となった場合には有料の訪問サービスを受けることになり別途費用がかかります。

 8年前に私が契約した八王子市内の大規模な有料老人ホームの場合は、約50㎡の部屋の入居一時金が約5000万円、月々の管理費が125,000円で、若し食事をすれば月50,000円/人の食事代がかかります。保険として多額の費用を支払っていますが、どのような介護を受けるようになっても「スマートコミューニティ稲毛」のような費用は発生しません。

 私がこの20年、毎年2-3月に過ごしているニュージーランドも高齢者社会ですが、福祉が行き届いており、一人暮らしの老人が自宅で過ごしても市のボランティアの人が安い費用で生活の援助をしてくれます。有料老人ホームも完備しており立派な有料老人ホームの一時入居金は2000万円位ですが、これは敷金で自己都合での退去・死亡の場合は全額返却されます。

 1990年頃からの数年間、毎年ドイツを訪れ取引先の幹部の案内でフランクフルト市内の有料老人ホームを2-3ヶ所見学しましたが、市内の便利な場所の有料老人ホームの入居一時金は300-500万円程度で、ニュージーランド同様敷金で退去時には全額返却される方式でした。日本のように営利目的の施設はなく、地方自治体かキリスト教団体の経営でした。

 圧巻は城山三郎の没後発行された「嬉しうて、そして」(2007年8月、文芸春秋社)の229-235頁)に記載されているアウグスブルグ市内の有料老人ホーム「フッゲライ」です。500年程前にアウグスブルグの富豪フッゲライが建てた有料老人ホームで、現在の家賃が当時のままの年間1ユーロ(費用はフッゲライの子孫が現在も負担している)と記載されています。

2010年6月19日 三宅 劭

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