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エッセイ・コラム 日常生活雑感

初孫の入学式

稲宮 健一

 今日4月6日は初孫の入学式、遥音ちゃん入学おめでとう。昨日までの寒が去り、青空が広がり、天を覆う満開の桜が祝ってくれました。体育館の式では、多くの方々の祝辞がありましたね。広いグランドの向う側にはコンクリート3階建ての立派な校舎があり、これからここで色々のことを一杯教えてもらったり、学んだりして、同級生と一緒に心豊かな人に育って下さい。

 お爺ちゃんは戦前最後の方の昭和19年に世田谷の中里小学校に入学しました。桜は今日と同じようにきれいに咲いていました。4月の桜は新しい門出を祝ってくれる花です。これから何回も祝ってもらえますね。校舎は木造で、体育館はなく、式は校庭で行われ、それから一年一組の教室に入りました。そばの給食室から、炊きたての美味しいご飯の匂いがただよってきて、先生からこのようにご飯を食べられるのも、兵隊さんのお陰ですと言われ、今は昭和女子大になっている13連隊の方に向かってお辞儀をしてから食べたのを覚えています。

 その年の暮れごろから、戦火は本土に及んできたので、お爺ちゃんの家族は金沢に疎開し、帰って来たのは戦争が終わった20年の秋でした。校舎の半分は空襲で焼け、教室では新聞紙のような教科書が配られたり、戦前の教科書の軍に関した部分を墨で塗って見えないようにしたなど、戦争に負けた惨めさを感じました。

 今では想像もできない打ちひしがれた時代があったのです。でも、徐々に復興し、湯川博士がノーベル賞に輝いたり、新幹線が開通したり、大阪で万博が開かれたり、経済が高度に成長したことなど、うれしかったことが敗戦の悲しさを乗り越えさせたと思います。

 今は学校の勉強、ピアノ、バレーと楽しいことが一杯の毎日と思いますが、少し大きくなって、社会のことに気が付いたら、遥音ちゃんが今日ある以前に、平和も、戦争も、嬉しいことも、悲しいことも沢山あったことを、お父さんや、お母さんから聞いて下さい。

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