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「800字文学館」

コロナ―今やるべきこと

野瀬 隆平

 コロナに明け、コロナに暮れる一年だった。
 感染拡大が思うように収まらず、残念ながらすっきりとした気分で新年を迎えられそうにない。だが希望はまだある。

 感染症により社会全体が大きな打撃を受けているものの、食料を始めとする日々の生活に欠かせない品物はまだ店頭に並んでいるし値段も上がっていない。
 仮に、これが戦争ならばどうであろう。生産設備や田畑が破壊された上に働く人が生産現場に行けなくなり、物価は上がる。そもそも品物が店頭から姿を消して、いくらお金を持っていても手に入らない状況になる。これは戦中・戦後に我々が体験したことである。
 確かに、生活に困窮する人たちが出ているが、金銭的に援助すれば生活を維持することは出来る。その意味で、まだ打つべき手がある。
 最も恐れるべきは、感染状況が更に悪化し物やサービスの供給に滞りが生じることだ。何としても避けなければならない事態である。
 その為には、これ以上感染を拡大させないことが最優先の課題である。経済を動かしつつ感染の拡大も防ぎたいと中途半端な政策をとっていると、結局どちらの目的を達することが出来ず、最悪の事態となる。正に、二兎を追う者は一兎をも得ずである。

 医療体制の充実を図ると共に、日々の生活に困っている人たちを経済面で積極的に支援すべきである。
「そんな事は解っている。財政赤字のもとでどう原資をねん出すればいいのだ」との声が聞こえてきそうだ。
 しかし、国だけが出来る大胆な財政出動を、赤字という「抽象的な」数字に惑わされて躊躇してはいけない。赤字と同額の黒字を享受している者がいるのも間違いないことだ。
 全ての人達の実生活に欠かせない物やサービスという「実物」を、必要なところに過不足なく行き渡らせるのが最も重要なことである。

 コロナにより多くの国々が緊急対策の結果、同じような財政問題を抱えることとなった。どう処理するかで経済の回復に差がでてくる。注視したいところである。

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