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「800字文学館」

素晴らしい伐採チーム

池田 隆

 先日、素晴らしいチームワークに半日の間見惚れていた。山荘の南側に生えている落葉松やコナラの大木を17本伐採した日のことである。山荘を建てたときにも伐採したのだが、20年間で残した樹々が幹径30cm、高さ40m以上にも伸びてしまった。それらが山荘への日照を強く遮るので、業者へ伐採を頼んだ。
 朝8時前に大型のクレーン車とシャベルカーが到着、遅れてトラックも加わり、総勢6人の作業が始まった。道路上のクレーン車から4段の腕がスルスルと50m以上の高さに伸びる。先端が伐採する樹の真上に来ると、ワイアにつけた2個のフックを地面に下ろす。待ち構えていた玉掛者が身につけた頑丈な帯にフックを掛け、樹の中間の高さより少し上の辺りへ引き上げられる。もう片方のフックを樹に縛ると、再び降ろされ、チェンソーを持って構える。クレーンマンが少し樹を引き上げ,ピッと合図を鳴らすと玉掛者は樹の根元を一気に切断する。
 樹は浮き上ったと思うと、瞬く間に天高く持ち上げられ屋根を越え、路上に降ろされる。横たわった樹の横にチェンソーを抱えた4人の作業員が一斉に並び枝落しを行う。つづいて各々は別れ、幹を3.6m長さの丸太に測って切断したり、シャベルカーでその丸太を揃えながら積み上げたり、切落した枝をトラックに積み込むなど、別々の作業に取り組む。その間にクレーンマンと玉掛者は次に切断する樹に取掛っている。作業待ちをする者もいなければ、大声で作業指示を出す指揮者もいない。粛々と工程が進み、まるで自動車の組立工場を見ているようだ。一時期大型機械の製造管理を行っていた者として、この見事なチームワークは感動的である。当初は30万円の見積書に些か躊躇もしたが、期待通りに山荘の日照が回復し、薪材も豊富に出来、そのうえ予想外のショー見学に大満足。
 伐採した跡地には林檎の苗木を植えてみよう。私自身が白い花や赤い実を楽しむことは無理かも知れない。しかし子や孫たちがきっと喜ぶことだろう。

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