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「800字文学館」

コロナ禍の紅葉めぐり

清水 勝

 厳しい冬を前に、最後の力を振り絞るかのように色づく紅葉は、観る者に感動を与えてくれる。そんなことから毎年欠かさず紅葉地を訪ねている。
 雄大さでは、大雪山旭岳のロープウェイからと秋田県森吉山のゴンドラからの眼下に拡がる紅葉は見事だ。遊覧船からでは十和田湖そして奥只見湖の水に浮かぶ紅葉もいい。紅葉といえば見逃せないのが京都。大原の里それに南山城当尾の里は、お寺の鐘の音とともに深く心に染みてくる。
 さて、コロナ禍の今年はどこに行くか。観光地を避け、マイナーな紅葉地がいい。30名以下でバス相席なし、1名1室とコロナ対策はバッチリのバスツアーを見つけた。Gotoトラベルで1万3千円の支援、さらに地域クーポン6千円も頂ける。
 行先は感染者の少ない福島県。紅葉地は白水阿弥陀堂(いわき市)、五色沼(北塩原村)、長床(喜多方市)、圓蔵寺(柳津町)、蛇の鼻(本宮市)。五色沼以外は行ったことも聞いたこともない所だ。観光客は少なく密になるような心配もなく、紅葉の木々見ながら静かに散策できた。
 コロナ対策として、乗車の度ごとに手指の消毒、乗客間のお喋りを防ぎ、退屈防止のためにバスガイドが適宜案内してくれる。名所に着けばガイディングレシバーを使用し、蜜を避けながらガイドの話が聞ける。
 問題はクーポン6千円の使い道だ。溢れんばかりの土産物を宅急便で送っている人もいたが、旅の土産は景色とその土地での触れ合い以外に良きものはないと考えているだけに何に使うか。
 夕食時にクーポンで酒を飲みながら思いついた。会津は日本有数の酒処だ。水がいい、寒暖差が仕込み・熟成に役立ち美味い酒ができるという。ならば日頃縁のない最高の酒を購入しよう。有名な『飛露喜』は手に入らなかったが、話題作りになる大吟醸純米『蔵粋』(クラシック)を購入した。この酒はもろみの時にモーツァルトの曲を聴かせ酵母を活性化して育てた心地よい音楽酒だという。
 その味は、お正月までのお楽しみ。

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