作品の閲覧

「800字文学館」

北朝鮮の体制変化はあるか

大津 隆文

 北朝鮮は国連制裁や台風等の自然災害により経済的苦境にあると伝えられる。一方で国連決議に反して核・ミサイル開発は継続している。国民生活を犠牲にし、拉致問題など「ならず者国家」とも呼ばれている北朝鮮の体制はなぜ変化しないのか。
 体制変化がないのは体制維持が国の存在目標だからで、終戦時に国体維持を最重視した日本と同じである。そのために対外的には核の保有、対内的には「アメとムチ」の政策が強力に推進されている。
「ムチ」としては、幼児からの愛国教育、社会的な情報統制である。体制への不満、批判をもらしたりすれば政治犯として取り締まられ、収容所送りとなる。自由な情報、言論がなければ戦争中の日本と同じく、自分達が正しく悪いのは外国だということになる。
「アメ」としては、権力機構の関係者は特権を享受し、首都平壌の市民は配給等で優遇されている。二重構造による支持基盤の強化だ。
 武力集団たる軍部(兵力約一二〇万)は重視されていて、金正日時代には先軍政治が標榜され、現在も重点的な資源配分を受けている。
 国際的にも隣接の大国中国は自国の影響下にある北朝鮮を必要としており、直接・間接に支援を行っている。

 では体制変化の可能性はないのか。ブレーンストーミング的に挙げてみると次のようなケースが考えられる。
①金王朝の血統の継続に問題が生じた場合、
②大量の餓死者発生等により民衆の不満が暴発した場合、
③非核化への政策転換等に武力を保持する軍部が反発した場合、
④政策転換が行われ中国、ベトナムのような政経分離路線が採択された場合(これが望ま
 しいと思われるが前提の非核化が実現困難か)、
⑤米国あるいは韓国との武力衝突が生じ戦争となった場合。
 いずれも現時点では想像の域を出ないが、今の体制がどう見ても無理な体制であることは間違いない。いつの日か「天の理」により無辜の人々によりよい人生が行き渡ることを祈りたい。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧