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「800字文学館」

旅の楽しさ

清水 勝

 セカンドライフの喜びの一つに、旅する機会が増えたことが挙げられる。夫婦旅もあれば、友人との旅もある。時には一人旅に出掛けるのも面白い。
 ところが今年はどうだろう。二月に九州『吉野ヶ里遺跡公園』に行っただけだ。本来なら四月は花見、六月には北海道の自然、八月の信州聖湖畔での合宿、十月は被災地訪問旅行、十一月は紅葉巡りと予定していたが、コロナ禍により全て断念。

 そこで、旅に行けない悔しさから、旅の良さを整理してみた。
 まずは旅する前のドキドキ感、ワクワク感だ。どんな景色が現れるのか、どんな出会いがあるのか、想像するだけで楽しい。「そんなのネットで観られるじゃないか」という意見もあるが、実際に観て、体験する臨場感は旅の醍醐味といえる。
 一人旅はビジネスホテルに泊まり、夕食は地元の方が集う居酒屋へ行く。地酒を飲みながら、知らない人から地元の話を聞く。真に心の観光地巡りという訳だ。
 旧街道歩きも、弥次さん・喜多さん気分で、時代を超えた面白さがある。旧東海道歩きで印象深いのが『薩埵峠』だ。眼下に東名高速道路、国道一号線そして東海道本線が駿河湾沿いに並行して走っている。それだけじゃない、見上げれば富士山が現れる。
 北海道では印象的な名の『雄冬』という小さな集落と、近くの『暑寒別岳』。『雄冬』はアイヌ語のオフィ(燃える)から来ているが、漢字を当てる際に「寒さの雄」のイメージだったのかも。その近くの暑さ・寒さの別れ道の『暑寒別岳』はアイヌ語の「ソー・カ・アン・ペツ」(滝の上にある川)を意味するが、これも粋な名付け親が上手く漢字を当てたのだろう。その裾野に広がる『雨竜沼湿原』は尾瀬に匹敵するエゾカンゾウをはじめとした百花繚乱の景色が広がる。
 紅葉巡りで『香嵐渓』に行った時には近くの『足助城』まで文字通り足を延ばした。ここで名城巡りをしている方に出会い、城についてのウンチクを聞かせてもらった。

 さあ、また旅に出よう!

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