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「800字文学館」

ルバーブ

大月 和彦

 数年前、信州戸隠の知人の畑から一株のルバーブを貰い、庭の片隅に植えておいたところ、今年はなぜか周りの弱々しい夏野菜をしり目にすごい勢いで成長した。フキに似た大きな葉が周りの雑草に覆い被さるようになった。

 6月末の梅雨の晴れ間に刈り取った。葉を取り除いた茎(葉柄)が1㎏ぐらいあった。刈り取った跡にすぐに出た芽がぐんぐん成長したので8月初に再度刈り取った。葉が大きい割に食用になる茎は短く、親指ぐらいの太さ。高原産の赤みのある茎と違って根元まで緑で硬そうだ。

 ルバーブ。和名はショクヨウダイオウ。タデ科の多年草で、根は生薬として健胃剤に、茎は食用になる。欧米では広く栽培されジャムに加工される。

 日本では、1920年代に避暑で野尻湖や軽井沢に来た外国人が栽培したのが始めという。戦後1970年代に信濃町教会の牧師太田愛人が野尻湖と黒姫山麓の四季や生活を綴った『辺境の食卓』で紹介した。健康・自然食ブームに後押しされて広がり、北海道や長野県の高冷地で栽培されるようになった。信州の代表的な土産のアンズ、リンゴ、ブル―ベリ―などのジャム類の中でルバーブのジャムがよく売れているという。

 刈り取ったルバーブをさっそく加工する。いたって簡単。皮を剝いたルバーブの茎を1~2㎝の長さに切って鍋に入れる。少量の水とルバーブの6~8割ぐらいの砂糖を加え、弱火にかける。レモンのしぼり汁を加えてゆっくりかき回していると茎が溶けて透明の飴状になる。焦げないようにかきまわしながらトロトロと煮詰め、適当な硬さになったら出来上がり。

 透き通ったマスカットのような高級感の色合い。甘酸っぱい風味。果物とは一味違うなめらかなジャムになる。食物繊維が豊富に含まれているので便通をよくするといわれている。瓶詰にちょっとした工夫をする。熱湯消毒した瓶にジャムを熱いうちに詰め、蓋をしてから蒸し器で4,5分間熱する。1年間変質しないジャムが出来上がる。

(2020・9・10)

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