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「800字文学館」

英国王室の思い出

塚田 實

 最近英国王室が色々話題になっている。春には天皇皇后両陛下が公式訪問されるようだ。ニュースを見て、英国王室のことを懐かしく思い出した。

 ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所は、多くのノーベル賞学者を輩出したことで有名だ。日立はここに研究分室を持っていた。2001年大学への寄付など長年の貢献に報いるとして、支援者組合(ギルド・オブ・ベネファクターズ)のメンバーに選ばれ、社長あてに授賞式招待状が届いた。社長は多忙で、次に研究開発担当の副社長を指名したが、やはり都合がつかず、欧州代表だった私にお鉢が回ってきた。
 大学の指定でサヴィル・ロウ入口近くにある王室御用達の店でガウンを作り、11月12日の式典に臨んだ。大学側のメインホストは学長のエジンバラ公フィリップ殿下だった。カクテルで家内は殿下に「お会いできてとても嬉しいです」とだけ挨拶し、私はしばし歓談した。とても80歳とは思えぬ元気さだった。百数十名が参加するディナーではメインテーブルに座らされ、殿下の隣には実質的学長である副学長が座り、私はその横の席を指定された。家内は私の向い側、英語ができない家内のため、カレッジの学寮長で元駐日大使を隣に配置するという暖かい心遣いだった。さすがイギリスだ。殿下を始め列席者はとても友好的で、私は本社による内部監査真最中なのを忘れ、ついついワインを飲みすぎてしまった。

 約10日後の21日今度はウィンザー城でエリザベス女王主催のレセプションがあった。ドレスコードは男性がホワイトタイ(燕尾服)、女性はイブニングドレスかナショナルコスチューム。私が燕尾服を着たのはこの時だけだ。家内は着物で参加した。ゲストはほとんど英国在住の外交団で民間は僅かだった。当時まだ75歳の女王は小柄だが気品があり、若々しく見えた。

 王室の騒ぎと英国政治の混乱はまだまだ続きそうだ。早くかつての栄光と安定を取り戻してほしい。

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