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「800字文学館」

白鵬が強かった?

首藤 静夫

 昨年暮、NHKの特番で「大相撲AI場所」が行われた。歴代横綱9名による仮想相撲だ。選ばれたのは、若乃花(初代)、大鵬、玉の海、北の湖、千代の富士、曙、貴乃花、朝青龍、白鵬。
 仮想相撲の仕組みはこうだ。各力士が横綱昇進後に初優勝して以降の30番(勝ち15番、負け15番)をAIに勉強させた。立合い、まわしの取り方、引きの強さ、土俵際のしぶとさ、勝負時間等多角的に分析させた。どういう時に力が出るか、逆に負ける確率が高いか。動きの都度、相手との優劣を判定、勝つ(負ける)確率を積み上げて勝敗を決めた。それをCGで映像化した。

 最初の3名は若乃花、千代の富士、朝青龍。いずれ劣らぬ荒法師だ。各々2番取り、千代が完勝。
次の組は玉の海、北の湖、曙。突っ張り、速攻の三者だが、何故か印象が地味だ。曙が2勝し、北の湖が2敗した。
 最後は大鵬、貴乃花、白鵬の代表的な四つ相撲。結果は大鵬がまさかの2敗、白鵬が2勝した。張り手、かち上げなしの勝利だった。大鵬は当時大きく見えたが、貴乃花や白鵬と組むと小さかった。
 最後に番外で千代の富士対白鵬戦が行われ、千代のウルフスペシャルが炸裂、溜飲を下げた。

 一世を風靡した横綱が揃い、懐かしかった。柏戸の前みつ・速攻や輪島の黄金の左は通用するかなど想像が膨らむ。しかし、ファンには自分のヒーローや贔屓がある。僕の場合は子供の頃に見た映画、「土俵の鬼」の若乃花だ。彼が負けた取組は見たくなかった。ここに天下の双葉山を登場させ、負けでもさせたらNHKは大変なことになるだろう。彼はレジェンドなのだ。

 プロ野球のAIシリーズも面白そうだ。大ファンだった長嶋が大谷の速球を動物的カンで打てるか(打ってほしい!)、イチローが金田の超スローカーブを打てるか(空振り!)など空想が広がる。
 政治家のセンセイ方もたまには贔屓の選手やチームに分かれてAI試合を応援してはいかが。今までの敵味方が入れ替わるかも。

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