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「800字文学館」

年末数え歌

稲宮 健一

 一つとせ、一気に進む高齢化。家督譲って楽隠居は昔ばなし。昨今はあばら家譲れば贈与税、消える時は相続税、財政赤字の付け回し。最後の最後まで付きまとい、搾り取るとは世知辛い。

 二つとせ、二人揃って、お前百までわしゃ九十九まで、ちらりほらりと白寿聞く。めでたいな、めでたいな。めでたいうちに、財布見ろ、二千万では足らないよ。あーどないしょう。

 三つとせ、米朝韓は三つ巴、トランプ流、衣の下に鎧隠し、頭なでなでが切り札か、北は王冠に核、こわもて装う無頼漢、あっち行っちゃ危ないよ、こっち行っちゃ危ないよ、文文(ぶんぶん)揺れるゴム人形。統一祖国は雲の中。

 四つとせ、、日の本は四面海に囲まれた潮の国、大海原を流れる黒潮、親潮は天の恵み、魚が押し寄せ旭日模様の大漁旗、これを知ってか、ご近所は遥か沖でサンマを盗り、大和堆ではいかを盗り、段々狭まる良漁場。資源保護も一緒に立案しろ。

 五つとせ、首都に輝く五輪の輪、世界からアスリートが集い競う夢の祭典、タイムは百分の一秒、長さ、重さは国際基準、審判含め総ての規準は公平無比を旨とする。と思いきや、薬(ヤク)で筋力ごまかす奴がいる。勝ちゃぁいいんだろう、文句あっかと居直る鉄面皮。お国柄が透けて見えますよ。

 六つとせ、六か月、半期毎に利益計上をチェックする。禿げ鷹や、物言う株主の短期利益至上主義は百年企業を狂わせる。

 七つとせ、七転び八起き、遼君ようやくカップ勝ち取った。デビューの頃の若さはないが、業とメンタル磨き連続バーディーでカップの山築け。

 八つとせ、両足踏ん張り、六方踏んで睨みきかせて見えを切る。歌舞伎十八番の見せどころ。荒事団十郎の花道披露もう間近。成田屋!

 九つとせ、九条、九条のうわべだけの掛け声はもう沢山。皆に分かる説得力ある論理展開やってみろ、広く会議を興し、万機公論に決すべしを思い興せ。来年はやります、私の手でやりますは延命のいい訳か。あゝもう飽きた。

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