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「800字文学館」

掌編小説の楽しみ

児玉 寛嗣

 一年半ほど前、企業OBペンクラブの「掌編小説の会」に入らないかと誘われ、勉強会を見学した。メンバーには数十編は書いたという猛者もいてちょっと気後れしたが、強い勧誘もあり覚悟を決めて入会した。二ヶ月に一作なら何とかなると気軽に思っていたが、初作はなかなかテーマが決まらなかった。窮余の策で「小説書きを趣味にすることを決めた男のこと」を書こうと思い書いた。急に会社を退職することになった無趣味の男がなにか趣味を持とうといろいろ試みてどれもうまくいかず、最後に「小説でも書いて見るか」と書く気になったというストーリーだ。コミカルなタッチで割にテンポよく書けた。

 それ以降、計8編を書いた。話の内容は様々だ。戦前、満洲に渡った男達の波乱万丈の人生。部下と不倫関係にあったエリート社員の妻殺し。ペットを飼う人間の様子をペットに語らせた話。不法移民のアメリカ入国までの苦難の道。IT企業の世界で活躍したが最後は自分で短い人生を閉じた男。老いることを極端に恐れる老人。水害とボランティア。
 なるべく、その時々の話題を盛り込んで読み手の興味を誘うようにしている。老人から金を騙し取ろうとする詐欺師や台風水害の凄まじさ等も取り上げた。

 ネタは自分が直接体験したこと、人から聞いた話、読書で得た知識、テレビで見たこと、ネットで調べたこと等だ。
 しかし、そのままでは小説にはならない。想像力を働かせて話をどう展開させるかだ。主人公の人物像をイメージして書き進むように心がけている。その過程が書く楽しみでもある。書き上げて、それを少しの間、寝かせておき、改めて読み返して校正を加える。時には内容やストーリーの順序をガラリと変えることもある。登場人物の名前は記号で書いておき、物語の展開に応じて名前を決めて一括変換する。このような変換や順序の入れ替えはパソコンならではだ。パソコンの普及で執筆の方法も変ってきた。掌編小説書きはボケ防止のためにもなる。SFや時代小説にも是非、挑戦してみたいものだ。

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