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「800字文学館」

「モブツ大統領の息子」

吉田 眞人

 某商社の先輩(元ベネルックス支店長)から教えて貰ったベルギーのJOKEを記す。

 モブツ大統領の息子は、長いことブラッセル大学に在籍している。彼は女子学生の尻を追い回す事に極めて熱心であるが、勉学には全く興味を示さず、従って卒業に必要な単位が取れないのである。

 ある日、学長にモブツ大統領から電話があった。大統領「学長お元気かね。実は来春の選挙で息子を副大統領にしたい。今年こそ卒業させてくれるのだろうね?」学長「当学の卒業には所定の単位が……」大統領「貴学には多額の寄付をしていることをお忘れなく。良いね。」

 次の日、学長は緊急教授会を招集し、事情を説明、良案を募った。ザイール(旧ベルギー領コンゴ)からの寄付金がないと大学の運営が難しいのである。長い静寂の後、一人の教授が手を上げた。教授「私に考えがあります。任せてください」学長「おお歴史学の教授。有難い。宜しく頼みますぞ」

 翌日、教授は息子を研究室に呼んだ。教授「これから問題を出す。君が正解を答えられれば、歴史学の学位を与えよう」息子「先生、有り難う。これで僕は国に帰り、副大統領になるんだ」教授「大学の近くにワーテルローの古戦場がある事は君も知っているね。約二百年前に、フランスのジェネラルがイギリスのウェリントン公爵と戦い、惜しくも負けてしまった場所だ。“このフランスのジェネラルの名前を答えよ”これが今日の問題だ。君には少し難しいかも知れないので、あそこにヒントを用意したので、よく見てから答えなさい」と部屋の片隅を指さした。そこには小型の冷蔵庫と、その上にコニャックの瓶が置いてある。コニャックは、XOとVSOPの間に位する高級品であった。息子は早速そこに行き、まず瓶を手に取り、次いで冷蔵庫の扉を開け内外をチェック、もう一度瓶を取り入念にチェック。にこにこしながら戻ってきた。息子「先生、解りました!」教授「して答えは?」息子「ジェネラル・エレクトリック!」

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