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「800字文学館」

日本は破綻しない

野瀬 隆平

 国債の発行残高が膨れ上がり、このままでは返済できなくなって、日本は破綻するという人たちが多い。
 その一方で、次の様に主張する者もいる。
「日・米などの先進国の自国建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか」
 前から同様の考えを持っている自分にとっては、最近、日本でも注目され始めた「現代貨幣理論」(MMT)がこのような主張をしても、当たり前の話しであって驚きはない。

 しかし、先に引用したこの文章は、MMTを信奉する論者のものではない。何と日本の財務省がそのホームページで明言している言葉なのである。
 アメリカの格付け会社が、国債のランキングを下げたことに対して反論したものだ。オリジナルは英文であり、和訳がつけられている。国債を買ってもらうために、海外に対してはいかに安全であるかを強調し、増税の必要性を日本の国民に訴えるときには、その理由としてこのままでは国債が危ういからだという。論理を使い分けているように思える。
 更にホームページで財務省は、国債がなぜ心配がないのか、その理由を次のように説明している。

  1. ①マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国である。
  2. ②その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている。
  3. ③日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高である。

 正にその通り。誠にもって正しい理解である。
 しかるに、日本の国民にはこれ以上国の借金を増やしたら大変だと危機を煽り、それを避けるためには、どうしても消費税率を上げなければならないと主張する。大方の政治家や経済評論家もこれを鵜呑みにして後押しする。

 デフレからまだ脱却できず景気の後退が心配されるこの局面で、消費税の税率を上げたらどうなるのか。今、求められている適切な経済政策は何なのか、財務省自身が展開している正しい真っ当な現状認識と論理に基づき、考え直して欲しいものだ。

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