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「800字文学館」

ル・マン サルト・サーキットを走る。

志村 良知

 ルマン24時間が行われるサルト・サーキットは、フランス西部ルマンの南郊外に専用サーキットと公道を組み合わせて特設される。メインスタンド前のスタートとゴール、それに給油や整備を行うピットなどがある専用部分が約3キロ、公道部分が約10キロの全長13.6キロ。普段走ることができる公道部分でレース実況にも出てくる名所は「ユノディエール」、「インディアナ・ポリス」、「アルナージュ」

 ルマンの町から真直ぐ南下する田舎道が「ユノディエール」。長さは約6キロ、中間に2か所のシケインが設けられるまでは、時速300キロを超える車が地上に留まっていられないとか、アクセル全開以外何もすることがないドライバーが流れる景色で催眠状態に陥るなどといわれた伝説の直線である。
 視野の上部を流れる木の梢の間を気分は300キロ、実際は制限速度90キロで約4分走ると終端のロータリーへ。レースではロータリーの手前で右に逸れ専用コースに入る。ここは全速から一気に80キロへ減速した車が右ヘアピンを身を捩って曲がるというルマンの随一の名所「ミュルサンヌ」。本当はその急減速と急カーブを経験したいのであるが、残念ながら専用コースには入れない。
 ミュルサンヌのロータリーを右折、赤白だんだらの縁石を踏んづけながら緩い右カーブを駆け抜け、きつい左カーブの「インディアナ・ポリス」へ4―3 ―2速と減速して突入。公道なのにバンク付きで、カーブの外側にはエスケープ・ゾーンがある。抜けるとすぐ、ごく普通の十字路である「アルナージュ」の交差点。レースでは右大回りできるが全コース中最も低速になる個所である。交差点を右折するとレースコースはポルシェ・カーブの右ターンで公道を離れてメインスタンド前に向かう。公道は直進してメインスタンド裏を大回りし「ユノディエール」に合流する。
 レースのラップは3分25秒位。公道ドライブでは約13分。さあ、もう一周行くぞ

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