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「800字文学館」

見られてる

内藤 真理子

 読書会に参加しているので、度々インターネットで本を購入する。アマゾン本→本の題名→中古、とインプットするとずらりと候補が出るので、私はたいていその中で一番安いのを選び注文する。しばらくすると、家のポストに本が届いてとても便利だ。
 だが、一度それを利用してからというもの、私のメールに、購入した本と同じ作者の作品や同じ傾向の本の宣伝が入るようになった。注文する人は何万人もいるだろうに、私如きの注文したものを分析する人がいるのだろうかと考えたら、見られてるようで怖い。
 いやいや、買った途端、題名、作者、出版社、中古の値段等が、一瞬のうちにコンピュータにインプットされ、購買者の好みのパターンを読み取り、それに従ってコンピュータが勝手に送信するのだろうと推測するに至った。人の目が介在していることはないのだろう、きっと。
 話は変わって、フィリピンに住んでいる息子に第一子が生まれた。嫁はフィリピン人なので孫は日本語を知らずに育つだろう。私が英語を勉強しなければ孫とも話せない! そう思ってNHKの英語講座を聞くことにした。そして本屋に行ってあれこれ見て適当な本を選んで買って来た。
 以後、テキストを机に広げ、インターネットのらじるらじるを聞きながら、毎日五分間勉強している。
 英語を始めてから三週間が経った。するとメールに、私が使っている英語のテキストの来月の申し込み方法が入っている。
「どうして私のメールアドレスがわかったの?」「本屋に買いに行くのを見ていたの?」
 冷静になって考えると、コンピュータは、個別に使われるインターネットを見張っていて、何回見たのかチェックして一定の回数以上見ると、個別のアドレス宛に、痒い所に手が届くような情報をサービスすることになっているのかもしれない。
 だが、いくらコンピュータでも私が読書会に参加している事や、息子一家がフィリピンにいることまでは、かぎつけまい。きっと。
 いや、もしかしたら……。
*書こう会注・宣伝メールは作者が購入、操作する際同意をしている所為だ。

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