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「800字文学館」

「METライブビューイング」を観て

藤原 道夫

 リーフレットに「ニューヨークで上演中のメトロポリタン・オペラを大スクリーンと迫力の音響で体感」とある。ここ数年シーズン毎に2、3演目観てきて、この一文に納得する。今シーズンも「魔笛」など3演目を観た。その折、METの運営方針について感じたことを以下にまとめる。

  1. ①シーズン中に上演されるオペラを全て映像化し、世界中に配給する。これはMET以外に実施していないだろう。どの国に居ようと、上映する映画館に行けば、METのオペラを見ることが可能になる。しかも現場でも見ることが難しい細部(歌手の表情、オーケストラ・ピット内の様子など)が映し出される。また観客の反応も知ることができる。どの歌手に拍手が多いのか、興味深い。
  2. ②幕間に出演歌手、指揮者や演出家へのインタビューが入る。取り仕切るのは有名なMETの専属歌手。今観ているオペラに出演している歌手の役に対する思い入れや歌う際の山場を知るのによい機会だ。また指揮者が重視していることや演出家の意図も分かり易くなる。司会者は次の幕への期待感を要領よくまとめる。実に見事な手腕だ。
  3. ③METに対する財政的な支援を訴える。司会者は「オペラの上演にはお金がかかる。入場料のみでは賄えず、ノイバウアー・ファミリー財団の援助はあるものの、皆さんからの寄付も是非お願いしたい。詳しくはホームページにて」という趣旨を熱く語る。最後に「映像も素晴らしいが、オペラは何といっても実演を観るに勝ることはありません。是非METオペラ・ハウスを訪ねて下さい」と締め括る。

 ライブビューイングの最後に、次のシーズンの演目と主要な出演歌手が手短に紹介される。観客はまたどれかを観ようと思いながら席を立つことだろう。中には是非METに行ってみたいと思う人もいるかも知れない。
①~③に挙げたことは、アメリカ的なやり方といえばそうなのだが、オペラを盛り上げていこうとするMETの方針は一貫している。

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