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「800字文学館」

「悠遊」創刊号

池田 隆

 企業OBペンクラブの同人誌「悠遊」の創刊号が郵便で届いた。札所歩きの指導を受けたM老師からである。師は本クラブの創設者たちと三高や京大で学友仲間だった。最近書棚の整理中に偶々本書を見つけたとのこと。「本クラブに入った」と私が以前に言ったのを覚えておられたようだ。
 創刊号は一九九四年に発行され、版の大きさや厚さなどの装丁は現行とあまり違わない。中を開いてみると、クラブが発足して五年目の発刊とあって、それまでの会の歴史が巻末に詳しく記載されている。執筆者は会員の八割近く、四十五名に及ぶ。その名簿を見ると、一九一〇年代生れが三名、一九二〇年代生れが二十四名で、ほぼ半数が商事会社と東京銀行のOBである。その中で私が名前と顔を知っている方は二人に過ぎない。
 作品はエッセイと俳句に分かれ、三十数編のエッセイが掲載されている。内容は海外経験に絡む話題、健康や趣味、歴史・時事、青少年期の戦争体験記など多方面にわたり、いずれも興趣を誘う。その中でもとくに印象的な作品数編とその要点を記すと、

【『頑張らない』すすめ】:「頑張る」の語源は「我を張る」。我を張ると傲慢・頑迷固陋となる。年寄りは横丁の隠居のように飄々と生きよう。

【ガン告知】:癌で鼻をそぎ落とした体験記。

【北の王国】:「東日流(ツガル)外三郡誌」の紹介。津軽十三湖付近では十四世紀初頭まで安東氏が水軍王国を築き隆盛を極めたが、地震と大津波に襲われ一夜で壊滅した。

【五倫文庫】:千葉御宿の世界的な教科書文庫、五倫文庫への訪問記。

【誰のための景気対策】:サラリーマン新党の元議員で本クラブ創設者の八木大介の論説。景気対策には国民の消費意欲が大切である。そのためには資産に時価で課税して企業の内部留保を減らし、消費税や所得税を下げろと提唱する。

 この度「悠遊」第二十五号が発行された。四半世紀後には我々執筆者の名前も顔も知らない世代が興味深く読んでくれることだろう。

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